暗く、何もない闇で私は生きていた


全ては、国主、伊達政宗のせいだった


なにが愛情だ、なにが愛しいからだ


こんなもの、愛情などと言うわけないのに



「白名」

『これは政宗様。如何なさいました?』

「調子はどうだ?」

『相も変わらず、最悪でございます』

「お前じゃねぇ。腹の子だ」



私の腹で蠢く小さな生命

奴と私の子

なんと嘆かわしいことだ

あの男の子を身篭るなんて



『貴方との子など、この子も可哀想ですわね?』

「俺の子が可哀想でも、お前の子なら、コイツも幸せなんじゃねぇのか?」

『そうでしょうか?私はそうは思いません』



孕みたくなかった

こんなかつてない、屈辱を味わうなんて

彼は愛おしげに腹をさする



『触らないでください。汚らわしい』

「テメェとの子だ。絶対産ませる」

『その前に死んで差し上げます』

「させねぇよ」



突如、私の身体が吐き気に襲われた

胃から逆流するなにか



『っ―――』

「気持ち悪いか?」

『へ、いきです…………触らないで』

「吐けばいいじゃねぇか」

『結構です………っぅ……』



あまりの気持ち悪さに身体を抱き締めるように倒れる

汗が止まらず、吐き気も止まらない



「いつまでそうやって強情してるつもりだ?」

『いつまででも………貴方に縋るくらいなら、死んだ方がマシというもの』

「テメェが傷付こうが死のうが、俺はコイツを産ませる」

『聞き飽きた、言葉ですわね………』




腹の子が外に出たいとでも言うのに、暴れ回る

その度に私は苦しむ羽目になる


何故私がこんな目に合わなくてはならないのか




『はっ…………ぁぐ………』

「苦しいか?」

『っ…………』




耳元で囁きが聞こえる


―――俺だけを求めろ


私は、静かに瞼を降ろした