それはあまりにもくだらない御噺だった 愛情を知らない女と愛情を与えなかった男の復讐記 女は愛情が何なのか知らなかった 男は女からの愛情が欲しかった 女は初めて人を愛する意味を知った 男は初めて愛情を錯覚した 女は何よりも夫を愛した 男は何よりも夫が憎かった 女は夫のために己の命を使いたかった 男は女のために攻め入った 女は男を殺そうとした 男は夫を殺そうとした 戦火が散った 生命が散った そしてそれは、虚空となりうる御噺となりそうだった 女は愛する夫のために 男は愛する女のために 夫は愛する女のために 女は修羅に 男が外道に 夫は人間に そして、終末を迎える――――― |