『失礼いたします。半兵衛殿、お怪我の具合は………』

「大した傷じゃない。気にしないでくれ」



半兵衛殿の部屋を訪ねれば、薬の臭いが鼻を付いた

半兵衛殿の細く、白い腕には痛々しい白い包帯が


全部全部、私のせいで




『伊達政宗を仕留めることが出来ず、申し訳ありません』

「大丈夫だよ。彼も、あそこでくたばる気はなかったらしいしね」

『……………やはり、私はあ奴の下へ戻るが正解でしょうか?このままでは、半兵衛殿たちにご迷惑が…………』

「僕の妻である君が、そんな弱音を吐くなんてね。その答えは、不正解だよ。君はここにいていいんだ」




暖かかった

彼の笑顔もその手も


私のせいで、これを失うなんて……




「白名君、悪いのは彼だ。君に非など、一切無いよ」

『しかし…………ッ』

「僕は、女の人に興味なんてなかった。秀吉の役に立てるのであれば、それでよかった」

『半兵衛殿…………』

「でもね、君が妻になってからというもの、とても幸せだよ。君のお陰で知らぬ世界を知ることが出来た」




はじめて、愛することのできた方

私に、人の温もりを教えてくださった方

何よりも失いたくないと思えた方


私の頭を撫でる手も

暖かい言葉をくれる口も

私のために剣を振るう右手も


何も、失いたくない




『では、教えてください。私は…………生きていてもいいと、言えますか?』




両親を兄を殺した私を

無情で無常に殺した私を




「ああ。君は、死ぬ意味などない」

『両親を兄を何の情もなく殺した。それでもなお、生きていていいと言えますか?』

「…………ああ」

『………………あ、りがとうございます………』




貰い、続く命だ

この方に使いたい


私の命なんかよりも、半兵衛殿の方が


重いのだ




『………半兵衛殿。一つ、提案があります』

「なんだい?」

『伊達政宗のことなのですが』

「……なんだい」




本当に、さよならを告げなくてはならない

そう、分かっても




『奴を殺める許可を、私にください』



―――――――私が、全てを終わりにします



「………白名、君?何言って………」

『お願いいたします、半兵衛殿。この命、貴方のために使いたい』




己も死ぬと分かっていてもなお私は、


貴方の盾となりたい