―伊達政宗視点―


憎しみの篭った目で睨む白名

俺が綾を側室に向かえ、固執していたときにも同じような眼差しを向けていた


俺は、その目が好きだった


俺を愛しているからこそ
俺を慕っているからこそ

そんな目を俺に向ける



「そんなに竹中が好きかよ」

『ええ、大好きですわ。愛していますもの』

「昔の俺と竹中、どっちがいい?」

『馬鹿な問い掛けですのね』



ふっ、と俺を嘲笑うように笑う

俺は、ここに来た理由を淡々と白名に伝えた


綾を側室に向かえ入れたのは、ほんの興味だった


あんな性格の悪い女は見たことねぇ

そんな面白味があいつにはあった


ふと思った


あいつに固執して執着すれば、白名は俺を見ると


そうと決まれば膳は急げ


馬鹿な綾はころっと騙され、気持ち悪いくらい俺に靡いてきた


だが、結果は最悪だった


伊達を裏切り、豊臣についた白名



「ここまで言やぁ、分かんだろ?」

『それが?』



拍子抜けした

なんの感情も篭ってない瞳で俺を見る

背筋が震えた



『それ、が如何しました』

「理解出来てねぇわけじゃねぇだろ」

『私の気を引くために。馬鹿な話ですのね。貴方は本当に愚かだ』



なおも恐ろしいぐらいの瞳をこちらに向ける

興味ない、とでも言いたげで



『面白い話でしたよ。お話としては』



ただ、現実では非常につまらない、馬鹿なことです


そう言い、城に歩きだす




「どこ行く気だ」

『戻るんですよ。微かにあった説得という言の葉さえ、失せました』

「言っただろ。俺はテメェを連れ戻しに来たって」

『連れ戻してどうするです?また、蔑まされるんですか?』

「俺が、テメェを寵愛する」




足が、止まった

ゆっくりとこちらを向き、睨む



『愛情など結構。私には、半兵衛殿がいます』

「離れにでも放り込んで、俺がテメェを監禁する。んで、寵愛する」

『どこまでも最低ですのね。結構です』



そしてまた歩き出す

俺は口許に三日月を描き、白名の身体を掴み、



『んっ……!?』



顎を掴み、無理矢理視線を合わせるようにし、唇を重ねた

白名は目を見開き、俺の横腹へ蹴りを入れた



『下種な男ね』

「足癖の悪い女だな」



蹴られた横腹か悲鳴を上げる

骨の何本かイかれたな



「心変わりなら歓迎だぜ?」

『しません。早く帰って、綾の方でも寵愛すれば如何です?』

「あいつはただのお飾りだ。俺はお前が欲しい」



くだらない、とでも言いたげで

白名は無言で城の中へはいり、闇に姿を消した



「くくっ、ははははっ!!」

「………政宗様?」

「面白いやつだ!俺をこうも楽しませてくれる!」



だからこそ、欲しくなる



「小十郎!」

「はっ」

「俺は何としてでもあいつを手に入れる」

「と、申されますと?」

「徳川と話しつけてくる」




あいつが豊臣を邪だと思っていることを知っている




「んで、豊臣を潰す」



そうすれば、手にはいると、知っているから