「Hey白名。久しぶりじゃねぇか」

『伊達…………政宗!?』



日常など、こうもあっさりと崩れ落ちるのか















朝から嫌な予感はしていた

それがどんなものかは分からなかった

だが、不吉なことが起こると確信していた




「Hum………暫く見ねぇうちに随分と色っぽくなったじゃねぇか」



その声を聞いて、背筋が凍った

なんで、なんでこの男が――――



『伊達、政宗ぇええええッ!!!』

「wow………おっかねぇ」



武器である扇子を出し、伊達政宗の喉元に押し付ける

つぅ、っと血が首筋を伝う



『何しにきたのだ!貴様の顔など見たくなかった!』

「俺はお前に会いに来たんだけどな」

『なに?』

「綾から聞いたぜ。豊臣に寝返ったんだって?」

『寝返った?馬鹿を申さないでくださる?私は貴方を裏切ったんですの』




貴方を裏切って、私は貴方を殺そうとした

なんとしてでも、どんな手を使ってでも




「前はこんな色っぽかったかねぇ?」

『戯れはよしてくださる?』

「お前、もう一度俺のところに来る気はねぇか?」




今、この男はなんと言った?

もう一度来る気はないか?


馬鹿馬鹿しい




「綾の性格も知ってる。お前の性格も知ってる」

『なら尚更。こんな性悪女欲しいんですの?』

「ああ欲しいね。俺はテメェみたいな女が好きだ」

『趣味の悪い』

「数月会わないだけでこんな色っぽくなると思わねぇだろ?」




伊達政宗はこんな不利な状況に関わらず、私の手首を掴む

本当に、喉の扇子を横に引いてやろうかしら




『離してくださらない?』

「くくっ………そんな強気なとこも好きだぜ?」

『気味が悪いですわ。それに私は半兵衛殿の正室なんですの』

「竹中の?なら尚更欲しいね」

「そこらへんにしといてもらえるかい、政宗君?」




おっとりとした口調に含まれた、殺意

武装し、目を細め、伊達政宗を睨む




「僕の妻だ。君が、白名君を捨てたんだろう?」

「ああそうだ。だが、捨てたもんほど欲しくなるだろ?」

「その汚い手を離したまえ。それ以上、僕の妻を汚さないでもらえるかい?」

「汚い、ねぇ。テメェのやり口の方がよっぽど汚いぜ?」




ギィン、と刃と刃の交わる音がした

頭上の石田殿の刀を止め、ニィと不気味な笑みを浮かべた




「なぁ、石田?」




石田殿は一度引き、言の葉を放った




「そいつを離せ。貴様がそいつに触っていい理由はない」

「俺のモンだぜ?」

「元だろう」

『離せ、伊達政宗。離さねば、貴様の喉を掻っ切るぞ』

「やれやれ、気の強い姫さんだ。今日のところは引いてやるぜ」




手を離し、刀を鞘に納める

伊達政宗は口許に半月を描き、元来た道を進んで行った




「白名君、大丈夫かい?」

『はい。ご心配をおかけしました』

「何故、政宗君が来たんだろうね」

『さぁ。私には分かりかねぬ答えです』




知っているのは、奴だけ