「白名君、君に頼みがある」

『はい。この白名にできるのであれば、何なりと』



石田殿より伝えられたこと

半兵衛殿は気まずそうに口を紡ぐ



「僕の、正室になる気はないかい?」



………はっ?



『え、と………今なんと………』

「僕はこの通り独り身でね。いい加減竹中のためにも子孫繁栄しなきゃいけない。何より、豊臣にそこまで貢献出来る君が気に入った」

『ありがたきお言葉でございますが………。その、私のように元正室でよろしいので……?』

「かまわないさ。秀吉も賛同してくれた。あとはまぁ、他の家臣なんてどうとでも宥められるさ」



さぁ、運命の分かれ道だ

なって損することなどないだろう

ただ、前回の正室になっておぞましいことにあったからな……



『………少し抵抗はありますが………』

「僕があの男と同じ同種に見えるのかい?」

『……いいでしょう。豊臣に返しきれぬ恩があります。お受けいたします』

「ありがとう」



半兵衛殿の細い身体でそれと同じぐらい細身の私を抱きしめられる

暖かみと半兵衛殿の香りが私の脳を満たす


あぁ、人とはこのように暖かかったのか


信じるな、心を許すな

また裏切られたときの痛みを味わうわけにはいかない

それを何よりも、私が知っているというのに

何故、何故



『うぁあ……っ』



涙が、溢れてしまうですか、半兵衛殿