どちゃどちゃと雨が屋根を打ち付ける音がする


曇天一色の空
変わらない景色
大嫌いな雨



「白名君、少しいいかい?」

『はい。何でしょう、半兵衛殿?』



私の部屋に不躾に入ってきた半兵衛殿

まあ別に、そのことに関して咎めようとさえ思わないが



「家康君と三成君に会ってほしいんだ」

『……………徳川殿と石田殿に?』

「秀吉には話したんだけど、二人にはまだ話してなくてね。僕はこれから次の策を練らなきゃならないんだ」

『……………構いませんわ』



淡く控えめに笑みを浮かべ、私はそれを承った

















「ん?……貴方が、白名殿か?」

『お初にお目にかかります。白名、と申します。好きなようにお呼びください』

「ワシは徳川家康。こっちが……………」

「………ふん」

「………石田三成だ」



性格も雰囲気もまるで逆でまるで違う二人

明るい徳川殿に対し、石田殿は酷くぶっきら棒だ



「すまない………いい奴なんだが、少し性格が………」

『いいえ、構いませんわ、徳川殿。私、そういった性格にも対応にも慣れておりますの』

「…………………私は、貴様を豊臣の者だと認めはしない」




初対面だというのに嫌われたものだ

嫌われることも咎められることも慣れてはいるのだが




『…………やれやれ、私も随分と嫌われたようですね』

「………すまない」

『何故徳川殿が謝るのです?誰のせいでもありませんわ』

「………おい貴様」

『はい?』

「名」




名?いやその一言だけ言われても何が何だかまったく分からないのですがね

名を名乗れ、もしくは石田殿の名は知っているのか、といったところだろう




「名は何だ?」

『……白名と申します。お好きにお呼びください、石田殿』

「………石田三成だ。好きに呼べ」

『………先ほどとは打って変わって性格が豹変しておりますね』

「ふん。貴様が豊臣に事足りるかどうか知りたかっただけだ。あの程度で怒り、挫けるようであれば私が叩き切っていた」




まさか奥州で鍛え上げられた精神的な強さがここで役に立つとは

こんなときばかり、伊達政宗にも綾の方にも感謝だ




「白名殿。貴方は何故、豊臣に?」

『………そうですね。さしずめ………』




さしずめ、何だろうか

徳川殿は絶対に豊臣を裏切り、伊達に付く

今言ったら、どうなるかなんて、手にとるように分かる




『…………父上が、嫌いになりましたので』

「…?それは、一体…………」

『ふふっ。私は、性悪女でしてよ、徳川殿?』





嘘を平気で吐き、偽りの言葉を簡単に紡ぐ

最低で手のつけられない性悪女ですわ