天才的頭脳の持ち主とはどんな者のことを指すのだろうか

たとえば頭の回転が恐ろしく速い者
たとえば自分で出来ぬことがない者
たとえば思いついたら即座に行動する者
たとえば人の考えていることが分かる者

そしてたとえば、人を観ることが大好きな者


どれが天才的頭脳なのか誰にも分からない


ただ私は、最後に当てはまる、物好きな「女中」だろう





『こんにちは、真現様。本日も御日柄が宜しいですね』

「こんにちは、名前さん!本当に天気がいいですね!」

『真現様の簪、とてもお似合いでございます』

「あ、これ?これ慶次から貰ったんです!京の職人が作ったんですよ!」



そりゃそれだけ派手で、挙句見せびらかすように着ければ誰でも気付きますよ

と、私は口には出さず、心の中で毒づきます



『先ほど、政宗様方がお呼びでございました』

「本当!?(ああ、やっぱり私は逆ハーなのね!トリップ少女がモテるなんて王道だもの!)」



心の声が丸聞こえでございますよ

彼女は私に一礼し、政宗様方の下へ品のない歩き方で向かいました



『暑いのですが、小十郎様』

「……………」



後ろから抱き付く小十郎様に離れるよう易しめに言います

が、効果は当然ありません



『小十郎様?』

「………んで…………」

『はい?』

「なんで関わった。なんで話した。なんで笑った。なんで用を伝えた。俺は、俺らは関わるなと言っただろ」



無理な命令ですがね

女中であるかぎり、それは不可能というもの

流石の私もそれは叶いません




「へー、名前ちゃんまた約束破ったんだ?聞き分けの悪い子だね」

『笑顔で怖いこと言わないでいただきます?』

「……市のこと………嫌いだから……?」

『違いますよ』




宥めるように市様に言えば満足気に笑みます

それはまるで壊れた日本人形のように美しく、醜悪に




「名前ちゃんさー、せーっかく生かしてんだからもっと命を有効利用しなよ」

『私なりに有効利用はしておりますよ?』




あの女を観るという有効利用の形で

ふふっ、と笑えばお三方は目の色を変えました




「どうかしたのか?」

『いいえ。ただ、観える者共の姿があまりにも面白くて』




楽しげに話、女を取り合う武将共の姿が滑稽で

ある者は奪い
ある者は笑い
ある者は怒り
ある者は捧げ

それが、あの日ノ本を納めようとした武将共の姿です


そんなもの、今となっては幻のようではないですか




「うっわームカつく。旦那のくせに、下種なくせに、名前ちゃんの笑みを受けるなんて」

「政宗様のために?何故、政宗様の笑んだんだ?」

「ふふっ………ねぇ、名前……名前の笑顔を受ける資格もないんだよ………生きる理由もないから……殺してもいい?」

『落ち着いてください。別に彼らが好きで笑んだわけじゃありませんよ』




ただ面白くて

でも彼は嫌いで

あの女も嫌いで




『これ以上いると、真現様にバレてしまいますよ?お戻りを』

「冗談じゃねぇ。ここは俺の特等席だ」

「右目の旦那のじゃないし。離れてよ、名前ちゃんが穢れる」

『聞いてます?』




ああほら、女がこちらに走っているではないですか




「佐助ー!小十郎ー!市ー!」

「真現ちゃん、どうかしたー?」

「うふふっ、佐助たちも一緒にお喋りしよ?」

「ああ、分かった」




私は無理に手を引く女を終始無言で見送ります




『ああ、だから面白いんですよね』




妄想だけを頭で綴る馬鹿な女を観るのは




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稀羅様へ
て、天才的って本当なんでしょうか
女中傍観は楽しいのですが、天才、あれ?
ヤンデレに小十郎を加えたのは管理人の趣味です
リクエストありがとうございました!





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