女王は嗤った

それはまるで、御伽噺のように下らなくて、幼稚だと







「姉上」

『政宗、どうかしたの?』

「なあ、いい加減俺の正室になっちまえよ」

『私たちは姉弟よ』

「そんな決まりに、俺は従わねぇ」



後ろから抱き着いてきた政宗は、首に手を回し、少しずつ締め付ける

私は多少の苦しみさえ覚えたが、その手をあやすように撫で回した




「成実にも小十郎にも渡さねぇ。俺だけの………」

「梵って、欲の塊だね」



ニコッと愛らしい笑みを浮かべ、前から抱き付く

腰に手を回し、甘ったるい声で政宗と口論を始めた



「梵、姉弟じゃ娶ることはできないよ?」

「だから何だってんだよ」

「そんなに名前から離れたくないなら、俺が貰うよ」

「くだらねぇjokeだな」

「俺が娶れば、会いに来れる。いい案でしょ?」

「ふざけんな。姉上は俺のだ」




どうでもいいけど、私を挟んでの口論は遠慮したい

日常茶飯事のようなこの風景

もういい加減、慣れてしまった




『二人とも、そこらへんにして、和菓子でも頂きましょう』

「姉上が食わせてくれるなら食う」

「名前があーんてしてくれるなら食べる」

『いくらでもしてあげるから、離れてちょうだい』




そう言えば、渋々といった様子で離れてくれた

圧迫感から開放された私は、肺に酸素を送った




「ね、名前は俺と梵のどっちの正室になりたい?」

「聞くまでもねぇよな、姉上」

『どちらでもいいわ』



結局どちらに娶られても、この愛情表現が変わることなどないのだから


柔らかい和菓子を小さく切り、政宗の口へと運ぶ



「…………ずるい」

『成実、少し待って』



待つことを知らない童のようだ

頬を膨らませ、拗ねる姿は



「なぁ、姉上」

『なぁに』

「姉上は、母上のように俺からいなくならねぇか?」



その問いに私は動きを止めた


母上は、政宗が右目を失ったと同時に姿を消した

おそらく、政宗のことなど見たくないからだろう




『ええ、もちろん』




その答えが合っているか、合っていないかなど、誰にも分からない

まぁ、故意にいなくなる気はないのだが




『私は、ずっとここにいるわよ』



それはきっと嘘である







女王は、嗤った

彼らは酷く病んでると

女王はせせら笑う

酷く甘美だと


そして、女王は、




―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―
睦姫様へ
折角甘からシリアスに変更してもらったというのに
結局甘にもシリアスにもならなかった………
私は甘とシリアスに嫌われてるのかもしれない
ひぃいいいい、睦姫様、申し訳ありません!
手直しはいくらでもいたしますぅううう!
リクエストありがとうございました!





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テーマ「人外ファンタジー」
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