小十郎に甲斐に行くことを話したところ、最初は戸惑ったものの承知してくれた

そして、どこからその噂を嗅ぎ付けたのか、


「蓮夜じゃん。どこ行くの?」


成実が、現れた

白々しくそう問うその目は、狂気じみている



『お散歩よ』

「へー。随分遠い散歩だね」

『ええ。すこし面白いものが見れそうなの』



口許に手をあて、クスクスを笑う

ちなみに政宗は先に甲斐に向かうとのことだ



『成実、何の用?』

「いやいや、城から出ちゃ駄目な蓮夜がよく甲斐にまで行けるなーって」

『そう定めたのは、貴方でしょう?』

「ま、そうだけどさ」



城から出てはいけない

そう私に言ったのは政宗でも小十郎でもない、成実だ

理由なんて知らない
その日から私は、外をほとんど知らぬ女へと成り下がった


外の女がどんな格好をしているか
外の食べ物はどんなものがあるか
外の風景は絵画とは違ってるのか
外の雰囲気は城内とは異なるのか


それさえも知らぬ、ただの女に


別にそれが苦痛とも不幸とも思わない

それが“愛情”であるならば、私はすんなりと受け入れよう



『ところで、成実』

「ん?」

『私が、どうして甲斐に行くことを知ってるの?』



私は散歩に行くとしか言っていない
甲斐なんて言葉、発していないのだ



「愚問だねぇ、蓮夜。俺が、お前の関わっていることで知らないことなんて一個もないでしょ」



迷いも戸惑いもなく、あっさりとそう答える



『…そう、ね』

「ね、蓮夜。梵とは姉弟だから正室にも側室にもなれないけど、俺だったらなれるよ。どう?」



遠回しに、正室になれ、そう言ってるのだ

一応成実とは従兄弟だから、正室になるのはあまり望ましくはないのだが



『断るわ。だって、そんな地位に興味ないもの』

「ちぇ……。分かりきってたことだけどね」

『そうね』



短く答え、私は外へと歩みを進める

私の知らぬ世界



『天女様、ね』



所詮、ただの



































ミーハー女に違いはないけれど



開幕を告げる小さな風音

(微かに鳴り響いた)
(その音はご存知ですか?)



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やったね、成実だせたよッ
何で主人公ミーハーなんて知ってるか?
それはまぁ、後々…

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