「やあ、久しぶりだね、蓮夜君」

『お久しゅうございます、竹中様。突然のご訪問、申し訳ありません』

「いや、構わないよ。後ろのが、噂に聞く天女様かい?」

「うんっ!私はぁ、琴平さくら!」

「竹中半兵衛だ。秀吉は南蛮に興味があるって、当分帰ってこないよ」

『まあ、それは残念でございますわ。ご挨拶しようと思っていたのですが』

「すまないね」



竹中様は小十郎と並ぶほどの天才軍師だ

さて、今回は一体どんな策略で、この女を傷付けるのだろうか



「天女様、部屋を用意してある。着いてきてくれ」

「はぁい」

「蓮夜君は、三成君と少し話ててくれ」

『畏まりました』



石田様、か

あの慟哭の刻まれた目が私は何気好きだったのだが

今は、ねぇ



「………蓮夜、様?」



背後からの声に驚いてしまった

控えめな、問い尋ねるような声に



『お久しゅうございます、石田様』

「蓮夜様なのですか?」

『私はこの世に一人しか存在いたしません』



大阪を最後に発ってから六月か

そうであれば、「こう」もなるか



「半兵衛様から聞きました。今日蓮夜様がいらっしゃると」



文を出したつもりはない

というか、記憶にない

何故知っているのだろうか



「今回はいつまでいるのですか?なんの御用で?誰に?」

『落ち着いてください、石田様』

「それに、あの汚らしい、女は一体誰ですか?」

『あの人は天女様ですよ。私がお世話をしているんです』

「蓮夜様が?嘘だ。あんな下種な女の世話を。蓮夜様が?ふざけるなぁッ!!」



右手首を強い力で握られる

やはり、認めてはくれないか



「何故ですか?何故あんな女の?蓮夜様は。蓮夜、様は」

『お放しください、石田様』

「嫌だ、嘘だ、認可するものか。蓮夜様は。蓮夜は」

『石田様』

「蓮夜様は、何よりも、冷酷で醜悪で秀麗な方のはずではないのですか?」




その言葉は、聞き飽きましたよ

毎回聞かされているのですから



もう十回以上貴方は言った

(私は、いつだって)
(悪人ですよ)

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