私は、振り返る



かなかなと鳴くひぐらしが酷く耳障りに思えた

そして、響く笑い声さえも煩わしく思える



「きちがい女」

『………………』

「そう思っておるのだろう?」



ぬしは強いからなぁ、よおく分かる


そうほざく大谷は酷く愉しげだ



『さあな。ただ、』

「ん?」

『蝉の声が、煩いなと思いはした』



そして、あの女の声も













私は、普通と何ら変わらぬ女生徒だった

友もいたし、家族もいた

そして、あの女もいた



「まーた男子に媚び売ってるよ、**の奴」

「うわっ。ほんと、気持ち悪い」

「ね、そう思わない、××」



ただ、他との相違点とすれば



『……そうだな。たしかに、鬱陶しい』



着目点が、違うということ


人がカラスは何故黒いのかと疑問に置けば
私はカラスが黒くある理由を尋ねたい

人があの女は気持ちが悪いと思えば
私はあの女が何故生きているかと思う



「××のほうがよっぽど真面目で優秀なのにね」

「あの女、金に物言わせる屑でしょ?」

「おまけに苛められっ子。ああーカワイソウ」



きゃはは、と笑う声も通り抜ける


今は夏

外は酷く暑い



『……蝉が煩いなぁ』



過去(いま)も現在(いま)も



は、振り返る