最初で最期のワガママ



乱世が終わった

世界が終わった


戦はなくなった

でも、何かを失った


東軍と西軍の長きに渡る戦は、互角で終わりを告げた


家康も三成も大谷も本田も黒田も真田も猿飛も政宗も片倉も元親も毛利も


皆、どこかへ逝った


東軍と西軍のどちらにも入っていない人は生きていた


それは、利やまつねえちゃん、孫市や鶴姫のことをさしていた


最終決戦の地、関ヶ原


探していた人物をやっと、見つけた



『ごめん、遅くなったね。家康』



あたしが関ヶ原のことを聞いたときには時既に遅し

全てが、幕を閉じていた


あたしが、どちらかに入っていれば


こんな結果にはならなかったかもしれない



『あーあ、皆まだまだ恋とかし足りなかっただろうになー』



若くして亡くなった彼ら

まだ人生の半分も、楽しめていなかっただろう



『あたし一人なんて、寂しいじゃん』



友を無くした


とても寂しく、とても虚しい



『ね、あたしもそっち逝っていいかなぁ?誰もいないんだもん』



それに、疲れちゃったしさ


あたしは家康の身体を抱き抱える

冷たい、身体

もう二度と、あの笑顔を見ることは出来ない



『家康、疲れちゃったよ、あたし』



歌舞伎者で、優しい叔父夫婦がいて、友がいて

人の恋を成就させることができて



『利、まつねえちゃん。ごめん、疲れたや』



きっと怒るだろうなぁ、まつねえちゃん

こんなとこで寝るなって


いいじゃないの、今日ぐらい


本当に疲れたんだからさ


利も、怒るかなぁ

人様に迷惑かけるなって




『ありがと』



あたしを心配してくれて



『さよなら』



あたしと共にいてくれて



『愛してたよ、家康』



人の恋ばかりで、自分のこと見てなかったや


あたし、家康のこと好きだったんだ


天国があるか分からないけど、あったら



『伝えさせてよ』



最初で最期の、ワガママ

怒らないで、照れないでちゃんと聞いてよ



最初で最期のワガママ

(あたしだけ生きても)
(寂しいんだよ)