I'll take over your WILL.



私は幼き頃より政宗様の世話役だった

別にそれが嫌なんて思ったことは一度もない

政宗様のお傍にいられて、役に立てることが、私の幸せなのだ



「白雪!」

『如何なさいました、政宗様?』

「いいか、よく聞けよ?俺は天下をとる」

『それはもう耳に蛸ができるぐらい聞きました』

「違ェよ、その後だ。もし俺は天下とる途中で死んだら、お前が天下をとれ」

『はい?』



一体何を言い出すんだ、この方は

天下の途中で死んだら天下をとれ?

なんて無茶苦茶な



『申し訳ありませんが、私は家臣にすぎません。天下をとるなど、不可能です』

「No problem!白雪だったら、とれるぜ!」

『まぁ、政宗様が死ななければいい話ですがね』

「yes!」



まさか、現実になるなんてな















政宗様が亡くなられた

理由は明白だった

兵に紛れた間者が、政宗様を刺したのだ

刺し所が悪かったらしく、血が止まらなかった

遺言のように、「白雪、絶対に天下とれよ?」と仰った


それは、四月の桜が満開のことだった



桜吹雪が、美しい



笑みながら亡くなられた政宗様も、きっとこういうだろう



「あの、片倉様」

『あ?』

「奥州は、どうするんスか?」



主がいなくなった今、どうするかなんて決まっていた


政宗様の意思を継ぐ



『政宗様は、天下をとれと仰った』

「と、とるんスか!?」

『当たり前だ。約束だからな』



政宗様の刀を手にとり、凝視する


政宗様、このように弱い私でも、とれと仰いますか?




―当たり前だろうが。俺の意思はお前に託したんだから―



そんな声が、聞こえた



『よし。………全員を集めろ!策を練る!』

「へ、へい!」



ご安心ください、政宗様


貴方様の好きな奥州の桜、決して散らせはいたしませぬ


だからどうか、白雪を見捨てないでください



そして、また、「ああ」と返事が聞こえた



I'll take over your WILL.

(貴方様のお覚悟)
(しかと受け取りました)


title by 空橙