その名は、神よりも信じられた。



私には、一人兄がいる

兄は私と違って何でも出来て、皆から厚い信頼を受けていた

一方の私は、女であるが故、誰からも相手にされなかった


そんな苦痛な毎日に、父からとある相談を受けた



「白雪、信玄公に仕える気はないか?」

『信玄公?』

「ああ。あのお方とともにいれば、お前も強くなれるぞ」



分かりやすい、嘘だった


私を信玄公のもとへ行かせるのは、強くするためじゃない


厄介払いだ




『分かり、ました』

「おお。では早速準備に取り掛かってくれ」




父も兄も大嫌い

私を嫌うやつなんて、皆大嫌い















『お初にお目にかかります。私が真田昌幸の娘、白雪にございます』

「そのように硬くなるな。わしが武田信玄」



とても、大らかな人だった

父や兄と違い、私を本当にちゃんと見てくれる人



「そうじゃ。お主に忍を着けよう」

『そんな……。私は女子。戦に出ることなど叶いません』

「女子であるからだ。忍すら着けず、主が死んでは死にきれんだろう?」



信玄公は忍の名を呼び、紹介をした



「こやつは猿飛佐助。大層腕の立つ忍だ」

「……大将、俺様女なんて聞いてないんだけど」

「女子であろうが将来立派な武士となろうぞ!」

「………あんた、名は?」

『……真田、白雪』



胡散臭い忍だった

こんな忍をどうして信玄公はこんなにも信頼しているのか

私には、理解できなかった



「では二人で談笑でもしているがよい」

「ちょ、大将!?」



静かに障子が、閉じられた



「……………あんた、女のくせに武士になろうとしてんの?」

『……………』

「刀とか槍は使ったことある?」



静かに首を横に振る

使ったことは愚か、持ったことすらない



「なんなら教えようか?」

『……ほんと?』

「俺様優秀な忍だしー」

『教えて』

「え、嘘、まじ。本気で?」

『うん』



なんだ、結構いい人じゃないか
















『さぁぁぁぁぁすけぇぇぇぇぇ!!!!』

「嬢ちゃんんんんんん!!!!女の子がそんな風に叫んじゃ駄目でしょ!」

『ええい!男であるのにそのようにねちねちとぉ!』



あれから五年が経とうとしていた

それだけ長い期間いれば、当然仲もよくなる



『佐助、団子が食べたいぞ!』

「おやつに食べたでしょ!」

『足りぬわぁ!』

「ええ!?」



猿飛佐助

その名は、神よりも信じられた


神のように曖昧な存在ではない
神のようにすぐ裏切らない



その名は、神よりも信じられた

(ずっと傍にいてくれて)
(ありがとう)



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管理人リハビリ小説
ゆっき成代は恐怖症になりそう
リハビリなんで、許してください

title by 空橙