三成視点


助けて


奴の目がそう物語っていたのは、気のせいではない

恐怖が張り付き、怯えが全てを彩っていた



「家康」

「なんだ?」

「人政は、助けてほしいと言っていた」

「そうだな」

「助けてやらないのか?」

「助けてやりたいさ。だがな、今のワシらでは無力すぎて、叶わない」



その言葉に、私は虚しさを覚えた

助けてやりたい




好いた女を、助けてやりたい



だが、無力で、非力で、弱くて

なにもできない



恐怖を物語っていたのに、怯えを纏っていたのに



なに一つできない


ああ、なんて



「なんて、私たちは無力なんだ」



今の私たちにできることは、人政に女を近付けないようにすること

そんな、ちっぽけなことしか出来なかった


せめて私が、片倉小十郎のような、大きな存在であったならば


救って、あげられたのに



「人政…………すまない」



本人に届くことのない、小さな懺悔



「っ…………すまない…………」



人政に届くことのない、小さな後悔



いっそ、この命と引き換えに


彼女を救えたなら


どれほど幸福であったか



届かぬガボット

(すまない、すまない)
(小さな懺悔と涙は、届かない)