そして、月日は流れた

私は梵天丸と言う忌々しき幼名を捨て、人政に

世では誰が広めたのやら、「独眼竜」だの「政宗」だの
誰一人、私の名を呼ぶ者などいない


くつりと喉を震わして笑えば、小十郎が眉を寄せる


「なんですか、人政様。また良からぬことでもお考えで?」

『differ(違う)。ただ、』

「ただ、なんです?」

『私の存在理由が、否めないことに、腹が立ってな』

「無茶苦茶を」

『そうさ、無茶苦茶さ。私はいつだってそうだ』

「小十郎めは、そうは思ったことございません」

『Ha!年老いたなぁ、小十郎。………天気が、いいな』

「……はぁ」

『よし、散歩にでも行くか』



































「………何か欲しい物でもございますか?」

『No。ねぇよ、んなもん』

「では、何故」

『天気が良いからな』



嘘だ
ただ、あの城の中にずっといることが嫌で
あの場にいるのが窮屈で

それから、抜け出したくて



『なぁ、小十郎』

「はい?」

『お前は、私を殺そうと思わないか?醜いと思わないか?』

「まったく」



即答

いつもコイツの言葉には驚かされる


私の傍にいる奴は皆、偽善者だ

だが、小十郎は違う

小十郎はただ純粋に、私の傍にいてくれる


こいつさえいれば、私は、生きていけるとさえ、思えた



偽善者のメヌエット

(そうしていつか)
(皆私を裏切る)