「人政……様」

『……こじゅ、ろ………?』



声がした

久しぶりに呼ばれた名前

ずっと待ち焦がれていた、人



「申し訳、ありませんでした。小十郎が未熟ゆえ、貴方様を悲しませてしまい」



違うよ、小十郎

私が弱いから

私がこんなにも泣き虫だから



「ですが。この小十郎は、貴方様以外慕うつもりはありません」

『………私、は………』



今のこんなみっともない姿、見せたくない

こんな泣き虫で、弱い私を



「全て宮古のせい、とは言いませぬ。小十郎にも罪はあります」



待って、やめて

宮古もお前も悪くない

悪いのは、私なんだから



「人政様………どうか、顔を上げてください」

『でも、』

「貴方様が泣き虫なことはずっと昔からしっております。今更、そのようなこと気にしないでください」

『っ!』



顔を上げて、小十郎に抱き付く

暖かくて、暖かくて

全て忘れさせてくれるような気がして



『うぁあっ…………こじゅ、ろ……小十郎…!』

「小十郎はここにおります」

『ごめん………ごめんね……!私が弱いから、お前にも宮古にも皆皆………』

「貴方様のせいではございませぬ」



子供をあやすような口調で優しく抱き締めてくれて

何よりも失いたくないと思えて



「おかえりなさいませ、人政様」

『………た、だいま………』



暗がりと痛みから抜け出せたその言葉が欲しくて



一欠片のレクイエム

(ただいま、ただいま)
(居場所を作ってくれてありがとう)