*幸村視点


奥州にある青葉城は、あまりにも静寂だった

無音の中聞こえたのは、声

女の、泣く声


ああ、この声は



「行ってあげないの?」

「………ああ。もう、出遅れた」



泣くのを止めてあげられるのは、某ではない

片倉殿なのだ



「旦那にしては珍しく引くね」

「これ以上悲しませとうない」



もう某は十分に彼女を傷付けた

これ以上、彼女の泣き顔は見たくない

某は何よりも、彼女の笑顔が好きなのだから



「だがせめて、思いだけは伝えたかった」



愛していたと、慕っていたと

遅すぎた告白を



「だから、」



今ここで、貴殿に伝える



「愛しておりました、人政殿」



伝えられなかった、愛の告白

伝えられたのは、哀の告白



伝えたのはエレジー

(愛しております)
(哀しております)