『宮古』

「ああ。あんたね。なに?」

『ちょっと、ツラかせ』










『聞かせろ』



私は、迷いも戸惑いもなく唐突にそう聞いた

今の今まで、ずっと疑問だったこと



『俺に、一体なんの恨みがある?』



私がなにをしたかは知らないが

私はもう、苦しんだよ



「なんの恨み?………人を苦しめて、なに言ってんだよッ!!!!」



怒声に篭められた殺意と悪意と、哀しみ

だが、どれだけ怒声を発しても、その姿はあまりにも哀しげだった



「あ、あんたみたいな奴のせいで………あんたのせいで!私の人生はめちゃくちゃよ!」

『奇遇だな。俺も、お前のせいでボロボロだぜ』



全て失って、総て喪った

理由も分からないまま、突き放されて突き放した

ワケも分からないまま、心配されて傷付けた


私は、あまりにも愚かだった



「普通に暮らしていたかったのに!普通にしていたかったのに!ワケの分からないままいきなり戦国時代にきて、それでこんな惨めな思いして!私が。私が何したっていうのよぉ!!!」



その叫びはあまりにも悲痛で哀しくて、愛に欠けていて

幼い頃の惨めな私のようだった


―近付くでないわ、醜さが移る
―妾の子は小次郎だけじゃ
―この、化物めが


嫌われて、いつだって私は誰かから嫌われ続けて

そして、失ってまた一時だけ手に入れて

無様で、そして悲しくて



「私だってっ…………あんたなんかと会いたくなかったわよ!」



ボロボロと涙が地に落ちる

その姿を見て、私はそれ以上問いただすことは出来なかった



涙色アリア

(お前が悪いわけじゃない)
(全部全部、私のせい)