**視点

うつらうつらと眠る彼女の姿が視界に入った

秀麗な瞳を閉じ、眠るその姿は二度と、起きないような気がした






慶次から、久しぶりに文が届いた


内容は、最悪だった

偶然その場にいた三成に文の内容を告げると、刀を持ち
「殺しにいく」
と静かに呟いた


そのときは急いで止めに入ったが、またいつ物騒なことを仕出かすか分からない


だから、ワシらは急いで奥州に向かった


右目はいなかった、噂の少女もいなかった


でも、彼女はいた



「……………人政」



三成は、静かに彼女の名を呟いた

だが彼女は、三成を裏切るように、



『こ、じゅ……ろ………』



そう、呟いた


仕方がないのだ

彼女が思って慕ってやまないのは右目なのだから


ワシらじゃ、ない



『…………ん………』



秀麗な瞳が開けられた



『……あ…?』

「あ………驚いたか?時間が空いていてな、遊びに来たんだ」



分かりやすい動揺に、在り来たりな嘘

でも人政はふっと頬を緩め、安心したように頷いた



『そっか………客間にいて。茶でも持ってくる』

「あ、別にいいぞ。顔見に来ただけだしな」

「………人政……」

『なに?』

「女は、宮古彩香という女はどこだ?」



宮古彩香

それは、きっとワシも三成もこの世で一番嫌いな人間

慕っている人を傷付け、悲しませたから


そして、彼女自身も嫌っているから



『……だ、れ?それ』

「知らぬなど言わせない。貴様を、傷付けた輩だ」

『………知らないなぁ。今頃、小十郎と一緒にいるんじゃない?』



あの二人は、相思相愛だしね


必死に涙を堪え、喋るその姿は




すぐにでも、壊れそうなほど脆かった





『ははっ………』



乾いた笑い声が、静寂に木霊した

ワシらは、どうすることも出来なかった

なんて、無力



「人政、本当は、」

『ごめん………部屋案内させる。慶次も暫く滞在するって言ってたし………』



近くの女中に声をかけ、ワシらを案内させる


なんて、なんて、



ワシは、無力で非力なのか


もどかしすぎて、にくすぎて



無力さハロルド

(こんなにも近くにいるのに)
(どうして、触れることさえ叶わないのか)