「……やほー、竜の旦那。機嫌悪いねぇ」


突然現れた忍、猿飛佐助

いつだってこいつはclownの仮面を付けているようで、気味が悪い

要約してしまえば、私はコイツが苦手なのだ



『ようmonkey。何のようだ』

「旦那がさー、どうしても来たいって言うからさ」

「うぉおおおおお!!!政宗殿ぉおおおおおお!!!!!!」

『Hello、幸村』

「あれ、珍しいね、竜の旦那が怒鳴ってる旦那見て怒んないなんて」

『そうか?』



よっぽど機嫌が悪いんだな、私

幸村は何が何だか分からないようで、頭に疑問符を浮かべている



「政宗殿、片倉殿はいらっしゃらないのか?」

「あ、本当だ。風邪引いたの?」

『…………色々とあってな』



未来から来た女のせいで関係がぎすぎすしているなんて言えっこない

私は、この二人にどうすればいいか相談したかった

でも、私は言葉を飲み込んだ

関係無い奴を巻き込みたくはない



『で、何のようだ』

「おお、そうでござった!ぜひ手合わせ願いたく……」

『sorry。今はそんな気分じゃねぇんだ』

「……………竜の旦那………」

『Ah?』

「あれ、誰?」



猿飛の指先には、女がいた

諸悪の根源である、宮古彩香が



『…………ただの女中だ』

「ふぅん?」

『何が言いたい』

「いや、変な格好だなぁって」

『そうだな』

「あれさ、ホントは誰?」



数々の嘘を吐き、数多の嘘を見破ってきた猿飛に嘘は通じないようだ

私は溜息を吐き、重たく口を開いた



『future……未来から来た奴だ』

「未来?」

『yes』

「大変そうだねぇ。ま、俺様達には関係ないけど」

「佐助!そのようなこと……」

「そうでしょ?俺様達は甲斐の人間だ。ここの人間じゃない。下手に首突っ込んで巻き込まれでもしたらどうすんの?」



猿飛の言うとおりだ

これは、アイツはここ、奥州の問題だ

こいつらには微塵も関係無い



『分かったら帰りな。今奥州が危ういのは、猿、テメェにだったら分かんだろ?』

「………帰らぬ」

『Ha?』

「某は帰らぬ」

『迷惑だ。残って、一体何をするつもりだ?』

「政宗殿のお手伝いをいたす」

『相も変わらず甘い考えだな。そんなんで、テメェの大切な奴救えんのかよ!?』



私は、救うことは愚か、守ることも出来なかった

小十郎の背に隠れてばかりで、ついにはその甘い行動故、小十郎を失った

私の隣に、温もりはない




『テメェが残って救えるものも守れるものも助けられるものもねぇ!』

「某はそのようなために残るのではない!」

『いい加減にしろ!いたところで、テメェは何も出来やしねぇんだよ!』

「っ!」




その言葉を紡ぎ、発してから気付いた

「いいすぎた。こんなことを言うつもり、無かった」

今更後悔しても遅い

幸村は俯き、静かに歩みを進めた




「………政宗殿、某は貴殿を好敵手と思ったことを後悔する。そのように人の助けも借りず、一人で抱え込む政宗殿など、好敵手ではない」

『ゆき……』

「佐助、行くぞ」

「はいよ。………竜の旦那、死なないことを祈っとくぜ」



私は、己のせいでまた一つ「何か」を失った

それもまた、大きすぎて



悲しみのグロリア

(助けて、そう言えれば)
(何一つ、後悔などしないのに)