―に………ま……どう…て……

―……………

―な………で………を…おいてく……の

―……………

―………け…にい………ま……













ひどく悪い夢を見た

泣きながら自分に縋り付く少女を




「佐助!起きているなら下りて来い!」

「はいはい」




下にいる旦那の声が脳に届いた

軽く欠伸をし、制服を手に取る







「おはよ旦那。何食べたい?」

「うーむ、何でもいいぞ!」

「じゃあ目玉焼きと味噌汁でいい?」

「構わないぞ!」



卵を三つ取り出し、旦那に味噌汁を頼む

かちゃかちゃと卵を混ぜる音が煩わしく聞こえてしまった



「……ね、旦那」

「む?」

「俺様の義妹のさ、五月って覚えてる?」

「五月?………覚えているが……」

「そっか。いや、深い意味はないよ。忘れて」




夢で見た、あの悲しい少女は、

きっと義妹の五月だ

左右色の違う目にオレンジの髪


五ヶ月前他界した哀れな少女




「五月といえば、政宗殿が真っ先に出てくるなぁ……」

「そーだね」

「五月はあの齢で高校に入れるほど秀才だったしな」

「……そーだね」




将来有望、そう謳われた五月

だがそれは、あまりにもあっけなく崩壊した

そして同時に、俺様は神を恨んだ













教室はいつもと変わりなく、騒がしかった

いや、変わりはあった



「ねぇ、あそこ………」

「五月ちゃんの席?」

「なんで荷物があるの?」

「誰かが置いてるだけでしょー」



廊下側右から二番目、前から四番目の席

飛び級で入った猿飛五月の席だ

普段ならあるはずのない荷物が、あった



―ねえ聞いた、五月ちゃん

―五月って、あの?

―うん。その子さ、生きてるって噂があるんだよ

―やだ、怖いこと言わないでよ



死んだ五月が生きている

ありえるわけ、ないのに



「佐助?」

「……………」

「佐助!」

「あ、ごめん。なに、旦那?」

「あれ、五月ではござらぬか?」



校庭に一人ぽつんと立つ少女

髪色も長さも、背丈も、五月と同じ



「五月………?」

「いやいや、幸ちゃん、んなわけないでしょ」

「第一真田、五月は死んだんだぞ?」

「しかし、面影があまりにも似ていて」



少女はゆっくりと顔を上げる

そして、ゆっくりと唇を動かす



―久しぶり。佐助兄様


「さ…………つき………」



たった一人の妹

そして、初めて恋慕を抱いた人



―――――――――――――
近親相姦になってしまった
佐助のお話が書きたかっただけ
夢主は死亡済みです
なんで生きてるかはまぁ、色々と


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