外で元気に子供たちが雨の歌など歌っている

だがワシら高校生からすれば雨など鬱陶しいことこの上ない



「毎日毎日ざーざーざーざー………。鬱陶しいんだよ!」

「何にキレてんだよ」

「雨に決まってんだろ!?教室蒸し暑くて死ぬっつーの!」



窓を開けようが閉めようがその暑さは変わらず

水分を幾らとっても足りない



「まだ6月だぜ?これから先どうすんだよ」

「というか男子が大半なんだしそりゃ暑いよ、色んな意味で」



学校の七割が男子生徒というこの学校

そのため一クラスに女子は十人程度

むさ苦しい



『………あのー……』



ワシの背後から聞こえた控えめな声

ゆっくりと首を捻ると、



『ごめんなさい。タオル借りてもいいですか?』



水色の長い髪を滴らせ、床に小さな水溜りを作る女子がいた



「………誰?」



猿飛が小さな声で訪ねる

この学校は女子が極端に少ない

そのため女子の顔と名前はほぼ全て一致する

しかしこの女子、

名前はおろか顔さえ見たこと無い

他校生の可能性は制服の時点で消えた




『水海雨音と言います。病気がちで学校に来ていなかったので、そのせいかと』



水海雨音、随分と水に関する名前だ



「Hey,monkey、テメェのことだからtowelぐらい何枚も持ってんだろ」

「すっごく気になる言い方だねー。あるけどさ」



猿飛は少女―――水海雨音にタオルを渡す

軽く拭き、ニコリと笑みを浮かべる



『ありがとう。これ、洗って返します』

「あ、いいよ別に」

『いえ。失礼ですので』



水海はワシの後ろから静かに去った

小さな水溜りと、微かな雨の匂いを残して



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何だかホラー風味になってしまった家康連載
雨の擬人化的なのがしたかった
結果これです


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