ペラリと霊幻が新聞を捲る音が昼下がりの霊とか相談所に響く。
「また誘拐かよ、最近は物騒だなー」と言葉が洩れれば、「そうですね」とおなまえは相槌を打つ。
霊幻の手にある新聞を見つめるが、流石に表紙面には大物芸能人の結婚発表が飾られていて物騒さは伺えない。


「ちょっと前には幼児が行方不明になってましたよね」
「あー、な。でもあれ2日後に見つかったんだと、山で」
「死体で?」
「衰弱してたけど生きてたんだってよ。小さいのによく耐えたよな」
「良かった…奇跡的ですね」


「保護者が見てない隙を狙って子供攫う奴の気が知れねーぜ」と、霊幻は首を振る。
うちにも保護すべき義務教育中の子がいるから余計なのだろう。
霊幻が新聞を読み終え机に置くと、ちょうどモブがやってきた。


「おはようございます」
「おはようモブ君」
「おはよ。よし、揃ったな。時間もいい頃合いだし、客んとこ行くぞー」


霊幻の声に従って外に出る身支度をする。
今日は心霊スポットの除霊を頼まれていて、規模が大きそうなのでモブとおなまえの二人がかりで対応することになっている。
「これも修業だ。バンバン溶かしてけよ〜」と意気揚々な霊幻に続いて事務所を後にした。


---


「二人でくる程じゃなかったですね」
「それだけモブ君が強くなってるんだよ。ねぇ?霊幻さん」
「修業の成果がでてきたな、モブ。よくやったぞ」


あっという間に除霊が終わってしまい、次々と依頼をこなしていけば残るは除霊マッサージの予約のみとなる。
となるとモブとおなまえの出番はほとんどない。


「人件費削減で、お前らもう上がっていいぞー」
「お先に失礼します〜」
「お疲れ様です」


今日の分、と時給を受け取ったモブと一緒に事務所を出る。
いつもより早い時間にあがったので、陽はまだ高い。


「こんな時間に帰るの何か新鮮だなあ」
「僕も久し振りです。部活に入ってなかった時以来かも」


そのままモブと部活の様子やおなまえが学生時代の頃の部活の話などしながら並んで歩く。
ふとモブの視線が不自然に止まったのに気付いて、反対側の歩道をつられてみれば数名の女子が談笑しながら歩いているところだった。
塩中のセーラー服だ。
中でも一際笑顔が愛らしい子がいる。
その子の黒髪やカチューシャなどの特徴を捉えている内にあることを思い出した。


「あ、もしかしてあの子がつぼみちゃん?」
「あ…は、はい。すみ、すみません…」
「? なんで謝るの?なるほど…学校のアイドルも納得の可愛いさね」


うんうんと頷きながら隣で狼狽えるモブに構わず歩くおなまえ。
女目線でも可愛いと太鼓判が押せる程の子だ。
モブも年頃だもんなあと思う反面、心臓の裏側が捻れるような気も湧き上がる。
これは、良くない。
余計なことはなんにも思っちゃいけない。
早く帰ろう、と思い無意識に足を早めればモブが慌ててついてくる。


「えっ、…おなまえさん、どうしたんですか?」
「あー…今日、洗濯物回したまま出てきちゃったの思い出したんだ〜」
「そ、そうなんですか…」


首を傾げながらも律儀に足並みを揃えてくるモブの人の良さに、一瞬で自己嫌悪する。


--幼気なモブ君相手に何をしているんだ私は…


モブに気づかれないように溜息を静かに吐けば、ふよふよとエクボが怪訝な顔で近寄ってくる。


『どうしたお前さん、突然』
「…ちょっと気が変だっただけよ」


まだ胸の裏の違和感は治まっていないが、これは気の所為だ。
私は…そう、青春謳歌している眩しさに充てられて、ちょっと羨ましくなっただけだ。
…羨ましい。

そうだ、若さに【ア◆子@】嫉妬しているだけ。
思考にノイズが走る。違う。そんなことない。
【アノ●】は関係ない。【アノ子ガ】。
こんなの気の迷いで、【刄m子ガ#マ&イ】私は何とも思ってない。
ノイズがうるさい。
私は何も【#マsiイ】。
何も…。【凵氈廖#□&*】。
落ち、着け。【--------】。


「おなまえさん」


腕を引かれてハッと我に返った。
「信号赤ですよ、危ないです」というモブの声で、まだ帰路の途中だったのを思い出した。


「あ…ごめんモブ君、ありがとう」
「いえ…どうしたんですか本当に。具合でも悪いですか?」
『顔色悪いぞ』


少し冴えたお陰でさっきまで頭の中を占めようとしていたノイズが消えた。
しっかりしろ自分。


「エクボさんには顔色のこと言われたくないです〜」
『…その調子なら心配することねーな』
「ごめんねモブ君、ちょっとボーッとしちゃってただけだから。大丈夫だよ」
「…なら、良かったです」


そう言いながらもモブの手はおなまえの腕を掴んだままだ。
「ちゃんと歩けるよ〜」と苦笑すれば肘から手へと下がっていき、しっかりと繋がれてしまった。


「でも、心配なので」
「…心配症だなあ」


--こんな所、さっきの子に見られたら困るのはモブ君なのに。

【アノ子ガ、羨マシイ】。


---


分かれ道に差し掛かると、『じゃあな』とエクボがモブの家の方へと曲がっていく。
この間言った通り、モブはおなまえの家まで送ってくれるようだ。
そうなると必然、前回送ってもらった時のモブの言葉が思い出される。

--「次、送った時でもいいですか?」
--「その時にはご飯いらないって伝えておくので」

これはやはり、家にあげることになる…のだろうなとおなまえはグルグル思考を巡らせていた。
モブとの会話も相槌を打つ傍ら人を上げられる状態だったろうかとか、中学生が好みそうなメニューを作れそうな食材があったかどうかが気になってしまう。
そうは悩んでも足を止めない限り無情に目的地は近づくもので、とうとうおなまえのマンションに辿り着く。
ポケットからキーケースを取り出してエントランスのロックに差し込めば、こんな時に限って先程事務所で霊幻が零した「保護者が見てない隙を狙って〜」という言葉がチラつく。


「…えっと、親御さんには連絡してある…んだよね?」
「はい、今日は大丈夫です」
「なら良かった」


モブの返事を聞いて鍵を捻り、エントランスのドアを開ける。
少し待ってもらってポストに特に郵便物がないことを確認してからエレベーターに乗り込む。
自分の部屋がある階に到着すれば今更緊張してきた。


「特に面白いものはないけど、どうぞ」
「あ、お邪魔、します」


扉を開けてすぐに「おなまえさんの匂いだ」とモブは思った。
おなまえは流れるような所作でシューズボックスの上にある小物入れにキーケースを置き、内側から鍵を閉めれば上着を脱いでコート掛けに掛ける。
「モブ君学ラン掛けようか?」とハンガー片手に訊ねられて、慌ててボタンに手を掛けると「あ、部屋寒いかも。エアコンつけてくるね」とおなまえは奥へと行ってしまった。
行き様に「好みでどうぞ」とスリッパを出しながら去っていくおなまえの様子はいつも通りのように見える。


--考え事してたみたいだけど、もう大丈夫なのかな…。


掛けやすいように空けられたコート掛けの手前側に学ランをかけると、スリッパを履いておなまえの後を追う。
リビングに入ってもやっぱりおなまえの匂いだと真っ先に考えてしまって、自分が少し恥ずかしい。


「紅茶とココアあるけど、どっちがいいかな?」
「じ、じゃあココアで…ありがとうございます」
「はーい」


ソファーに座るよう促されて、言われた通りに腰掛ける。
足元には毛脚が眺めのラグが敷かれていて、ステンドグラスのようなデザインのローテーブルがその上に鎮座している。


--こういうの、らぐじゅありーって言うのかな。オシャレだなあ。


失礼とは思いながらも部屋をキョロキョロ見回してしまう。
その中でモブの目にあるものが止まり「あ」と口に出した所で「お待たせ」とおなまえがココアを置いた。
お礼を言って受け取れば、甘い香りがふわりと立つ。
おなまえはモブの隣には座らず、テーブルを挟んだ向こう側でラグの上に腰掛けた。


「モブ君いつもは晩御飯何時なの?」
「いつもは…6時半、くらいかな…」
「んー、そっかあ。まだ時間あるね」
「今日はいつもより早く上がれましたからね」
「じゃあ何して遊ぼうかなー」


「実家からゲーム持ってきてればよかったー」と言いながらおなまえはトランプくらいしかないやとケースを取り出す。
テレビをつけたところで今はサスペンスかニュースしかやっていないだろうし、流行りの映画のDVDなんかもうちにはない。


「2人でできるのかー…ババ抜きは絶対どっちかだし、神経衰弱でもする?」
「いいですよ」
「…念の為聞くけど、モブ君透視はできないよね?」
「できないです。おなまえさんはできるんですか?」
「良かった。私もできない」


おなまえが力でトランプを机に広げ、裏のままシャッフルする。
次モブ君混ぜてと言われて同じようにトランプたちを混ぜ合わせた。
ジャンケンで先攻が決まり、モブは1枚捲り始めた。


---


「…むぅ…」


おなまえが記憶を頼りに捲ったそれは1枚目とは別の数字を表している。
数手前なら確かにそこにあったが、残りが少なくなってきたので端を詰めたことによって別の場所に移動しているのを失念していたのだ。
録に集まっていないおなまえの持ち札に対して、モブは絶好調だ。
またペアになったカードが避けられてモブの手の中にしまわれて行く。


「…まさか超記憶能力の持ち主?」
「普通、だと思いますけど」
「私が忘れっぽいの…?」
「そうとも、思いませんけど…」


結局そのままおなまえは敗れ、テーブルに突っ伏す。


「勝ったら洗い物してもらっちゃおうと企んでたのに…悪いことは考えるものじゃないわ…」
「そんなことしなくても。ご馳走になるんだから、僕やりますよ」
「お客様なんだからいいの。折角やるんだし何か勝ったらご褒美的なメリットがある方が楽しいかなと思って」


だからモブ君はテレビでも見て待っててよ。と刹那はリモコンをテーブルに置いてキッチンへと向かっていく。
気が付いたらちょうど頃合の時間だった。
モブが壁掛け時計の時間を見ていると、「オムライスで大丈夫?」とおなまえに訊ねられてそれに頷いた。

髪を結い上げて腕まくりをし、キッチンに立つおなまえが気になってついその様子を眺めてしまう。
普段は下ろされている長い髪が野菜を刻む度に左右に揺れる。
揺れに合わせてキラリと耳元のピアスも光って、それをとても大人っぽいとモブは思った。


---


食事を終えて洗い物を手伝ってくれるモブの隣で、おなまえは洗われた食器を布巾で拭いてしまっていく。
いつもはヒールを履いているので気づかなかったが、隣に立つと若干自分の方が背が高いんだなとぼんやり思う。
食器を全部洗い終えれば、「どうもありがとう」とおなまえがタオルを差し出す。


「こちらこそ、ご馳走様でした。美味しかったです」
「お口にあって良かった。ハンドクリーム塗ってあげるよ」


手が荒れちゃう、とソファーに連れていかれればポケットから取り出したチューブからクリームを取りモブの両手に塗り広げていく。
柔らかな手に包まれたり指を挟んだり、時には爪の周りにぐるりと円を描くようにされながらクリームが塗りこまれていく様を見ていると胸がゾワゾワした。
気を散らそう。
そう思って何か話そうと口を開けばちょうどおなまえの方から会話を切り出した。


「モブ君て今身長いくつだっけ?」
「ひゃ、157です」
「そっかあ。何かいつもと違うなって思ったら、目線が近いんだね」
「おなまえ、さんいつもヒールですもんね」


好きで履いてるとは言え疲れるんだよね、と苦笑する。
女の人は大変ですねと返せば「今度霊幻さんにマッサージしてもらおうかな」と言うものだから、胸のザワザワが強くなっていく。


「遅い時間になっちゃうし、親御さんに帰る前に連絡した方がいいんじゃない?」
「……」
「モブ君…?」


ハンドクリームを塗り終わって離そうとした手に、ぎゅっと力が込められて引き留められる。
不審に思ってモブを覗き込めば、さっきまでほわほわとした穏やかな雰囲気だったのが一転して真剣な空気を纏った目と合う。


「…おなまえさん今日、帰る時何考えてましたか?」
「え…」
「途中からおかしいと思ったんです。顔色だって悪かったし」
「そんなこと…、気の所為だよ。ホラ、元気でしょ?」


肩をすくませて笑ってみるが、モブの眼差しは変わらない。
それ所か「嘘です」と言い切られてしまった。
何も言えず、おなまえはとうとう黙ってしまう。
言える訳が無い。
言ったらそれは認めたのと同じだ。
自分の中でも否定をしなさいと理性が言う。


「…連絡しないとご家族が心配するよ」
「大丈夫です」
「モブ君」
「この話の後でします」
「……」


こんな時、自分に霊幻のような話術があればなとおなまえは押し黙ったまま考える。
困り顔でも引き下がってくれそうにないモブ。
何でこんなに干渉してくるんだという疑問が浮いてくるが、それは考えてはいけない、とその思考回路を絶った。


「…外、暗いです」
「うん…だから家に連絡を」
「洗濯物、しまわなくていいんですか」
「……モブ君の前でしまうのはちょっと恥ずかしいかな」


しまった。
口から出任せに頼ったツケがやってきた、とおなまえは思った。
「じゃあ僕伏せますから」と頭を下げて腕で見えないようにされる。
仕方なくベランダの洗濯物たちを取り込んで、一先ず寝室のカーテンレールに掛けた後再びリビングに戻る。


「ありがとう、終わったよ」
「…じゃあ、さっきの話の続きなんですけど」


やっぱりはぐらかさせては貰えないようだ。


「……大人なのにみっともないとは、自分でも思ったんだけど…」
「……」
「未来があるっていいなと、勝手に羨ましく思って嫌な気持ちになったの」
「…未来、ですか?」
「色んな選択肢が目の前にあって、可能性に溢れてる。私もあの子たちの1人だったらなって。別の可能性があったかもってさ」
「何か、後悔してることでもあるんですか…?」
「そうじゃないよ。そうじゃなくて…」

--…バカだ…。


何故ここで否定してしまったのだろう。
適当に過去の心残りに気を取られたことにして流せば良かったのに、これでは益々首を締めるだけだ。
ほとほと自分の器の小ささに呆れ返る。
おなまえが言い淀んでいれば、モブの真っ直ぐな瞳がその先を促す。
その視線から逃げるように額に手を当てた。

もう楽に、なりたい。


「もしそうだったら、体裁とか気にせず隣に居られるんだろうなって」
「…おなまえさん…?」
「……そう思って自己嫌悪になってただけだよ。もう大丈夫だから」


「ホラ、電話して」と息を吐いてモブに言う。
モブは少し考えてから、家に電話をかけた。


「もしもし…あ、律?うん。今おなまえさんにご馳走になってたんだけど…」


やっとモブの視界から抜け出せて緊張が解けた。
…のも束の間。


「僕、このままお邪魔してくから。律からうまく母さんたちに言っておいてくれないかな」
「え」
「そうだな…師匠、だと心配かけちゃうかな?……ああ、それならきっと大丈夫だね。ありがとう律。うん、うん、じゃあね」
「ちょっと!モブ君!」
「…おなまえさん。僕、さっきの説明じゃ納得できないです。だって、話したのにおなまえさんが全然スッキリしてない」


それは嘘だって思います、と先日とは逆のことを指摘されてしまう。
どうしよう。
どうしたら。


「実は今日、テスト期間の最終日だったんです。明日は休みなので、おなまえさんがスッキリするまで付き合います」
「…や、いい。いいよ。これ以上は話したくない」
「僕では頼り甲斐がないから、ですか…?」
「そういうんじゃない!違くて…個人的なことで…」


こうなったら無理矢理追い出そうと気は進まないがモブの体を押そうとすれば、その手を握られてしまう。
かと思えば弱々しい声を出すものだからつい反射的に否定すれば、また墓穴を掘ったと嫌な汗が出た。


「……」
「………」


顔色が赤くなったり青くなったりと変化の絶えないおなまえを、モブは観察する。
体裁って言葉が出てきたということは、要するに他の人からどう思われるかがおなまえにとってすごく大事なことで。
つまりおなまえの悩みは、常識で考えれば他の人から責められかねないことなんだろう。
例えば…


「…僕が上がり込むの、やっぱり迷惑でしたか…?」
「! モ、モブ君を招いたのは私だよ。迷惑だなんて思ってはいないよ。…でも、ご両親きっと心配するよ…。私がモブ君のお母さんだったら気が気じゃないもの」
「……じゃあ、僕を追い出しますか?」
「…う…、できれば穏便に帰って欲しい。遊びにくるのはいつでも歓迎するから!泊まるのは、ホラ…何か…間違いが起こってからじゃ……遅いしさ」
「間違い、ですか」
「ま、万が一ということも…あるかも、しれないし……」
「万が一」


段々とおなまえの顔が赤くなってきた。

おかしいな。
親が心配をする、ではピンと来ていなさそうだから説明をしていただけのはずなのに。
なんで、私、泊まったら間違いが起きる可能性を持ち出しているんだ。
中学生相手に欲情する女ですって、言ってるようなものではないのか。
モブ君の顔が見れない。
この手を離してほしい。
掴まれていては恥ずかしさで震えているのが伝わってしまう。


「…もう、許して…お願いだから帰って」
「……僕、神経衰弱勝ちましたよ」


下を向いて消え入りそうな声でそう言えば、上からモブの声が降ってくる。
ギッとソファーが音を立てた後、おなまえの腰にモブの片膝が触れた。


「だから、お願いするのは僕の方です」
「…何を…?」
「僕に嘘をつかないでください」
「……」
「おなまえさんのこと、僕はもっと知りたいです」


心臓が早鐘を打つ。
でもいけないんだ。
その言葉に浸ってはいけない。

【アノ子ガ羨マシイ】。

だってあの子だったら、素直に嬉しいって、そう言える。


「…モブ君には、他に好きな子がいるでしょ。そういうのはその子に言う言葉だよ」
「…僕が好きなのは…」
「つぼみちゃん、でしょ。その子に言ってあげるべきだよ」


だって私は成人してる女で。
モブ君は中学生で。
中学生同士が好き合うのは普通で。
社会人と中学生じゃ釣り合えないから。
私の一時の気の迷いで、モブ君を巻き込んではいけないから。


「もう、離してよ。本当に、これ以上は追い出すよ」


力を使ってモブを押しのけようとすれば、モブも対抗しておなまえから離されないようにしてくる。
互いに加減しているとはいえ、少しだけモブの方が出力が高いのかピクリとも離れない。
と同時に力を発動させたことでモブの思考が流れてきた。


--僕が本当に好きなのはおなまえさんだけです。
--全然大丈夫な顔してない。それなのに放って帰るなんてできない。

「私は…、違うよ、モブ君のそれは勘違いだよ…」
「…勘違いかどうかは、僕が一番わかってます」


モブの言葉がおなまえを揺らす。


「自分の気持ちは自分が一番知ってます」


諦めて力を収めた。
モブが本気だと知ってしまったから。
彼の心を覗いたなら、次は


「だから、もう一度言いますね。僕に嘘をつかないでください」
「……」
「僕はおなまえさんが好きです。おなまえさんは僕のこと、好きですか?」


私が 暴かれる番。


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