これは一体何が違うんだ、と芹沢は値段の違う参考書を何度も見比べる。
カラー印刷だとポイントがわかりやすい。
でも内容自体にそんなに差はないような気がする。
安い方でいいか、カラーであること以外にも利点があるのかとかれこれ十数分悩んでいた。
そんな芹沢の袖肘を軽く引っ張る誰か。
通行の邪魔だったかと「すみません」とすぐ横に避けようとすると


「みょうじ…また本屋で働いてるの?」
「全然気付いてくれないから来ちゃった」


店名の入ったポロシャツ姿のおなまえが嬉しそうに笑って立っていて、芹沢も挨拶すべきか仕事中でしょと注意してやるべきか迷う。
そもそも此処は芹沢が通っている学校に一番近い且つ深夜まで開いている唯一の書店で、もしかして狙って来たんじゃとも思う。
何から口にすべきだろうか。


「…あのさ」
「あ。その右の方の参考書、この間も別の人が買って行ったよ」
「こっち?」


口を開いた芹沢の声に被せるようにおなまえが芹沢の持つ参考書を指さした。
カラーじゃない方か、と改めて手元に視線を落とす。
すると「こっちは補足が巻末に纏められてるんだけど、こっちは同じページ内にあるからページを行き来しなくて良い」だとか、「カラーの方は購入するとレジで別テキストが付属で貰えるから余計に高い」だとか話す。
いつの間にそんなに参考書事情に明るくなったんだと説明を続けるおなまえを見た。
その視線に気が付くと


「私、役に立つだろう?電話番号教えてよ」


この間仕事の時持ってたの、見てたよとおなまえが得意気に芹沢を見上げた。


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