おまけその1
【数日後】
「おなまえ?何でそんなに鮫や動物と戦う動画ばかりチェックしてるんだ?」
「相手が人型じゃないと、今の私では碌に戦えないから」
「……うん?」
「パーパが今まで戦った相手で苦戦した動物は何?」
「パーパは動物とは格闘しなかったよ。銃だ。苦戦もすることはなかったかな…」
「そう…」
「………」
--うちの娘は何と戦うつもりなんだ…?
---
「あの人の紹介だから話を聞いてみれば、"呪玩を教えて欲しい"だ…?」
「はい」
「理由は」
「エモノがあれば人型でない霊相手でも苦戦しないかと」
「…職質に気を付けろよ……」
-2時間後-
「呪いってのは、憎しみだとか殺意だとか、そういう気を入れるんだって何回言えばわかる?」
「入れてます」
「まったく感じられん!!」
「……」
「……お前、呪うの向いてないんじゃないか?」
---
「どうだった?桜威」
「彼の言う通りにしてみたんですが…入らなくて…」
「……え…?みょうじさん何をしに…?」
「まったく感じない、と言われてしまいました」
「そうかぁ…残念だったな。ま。この間みたいなのはレアケースだろ。今後も芹沢に任せようぜ」
「いつの何の話をしてますか?みょうじさん、何しに出掛けてたんですか?!」
おまけその2
【除霊後おなまえが限界だったら】
陣から出られたんだ。と理解すると、途端に体から力が抜けて倒れ込んだ。
情けないけれど、もう足に力が入らない。
緊張が解けてやって来た痛みに呼吸を整えて耐えると、上半身が起こされた。
「みょうじさん!」
「…芹沢、さん。…体は…大丈夫ですか?」
「俺よりもみょうじさんです…!血が…」
「これは、切れただけです…すみません。少し休めば立てますか…ら!?」
突然の浮遊感と一層近くなった芹沢の顔に、持ち上げられたことに気が付いて負荷を減らさなくてはと咄嗟にその肩にしがみ着く。
「わ、私重いので、大丈夫です。下ろしてください」
「早く此処から離れた方が良いです」
「それはそう、ですけど…」
一般女性より重い自覚はある。
芹沢も負傷しているのに無理をさせる訳には…それに額を伝う血がスーツに着いてしまう。
芹沢の首に回した左腕に頭を押し付けてそれを防ぐが、おなまえの白いシャツはあっという間にそれを吸って許容量を越す。
「汚れます」
「そんなのいいですから」
「芹沢さん」
「黙って」
おなまえの言葉を無視して芹沢は抱えたまま歩き始めてしまう。
すぐ耳許で真剣な声に制され、おなまえは口を閉じた。
初めて向けられた強い声に、本当に自分の知る芹沢だろうかと横目で確認する。
こんな状況だからか、いつもより引き締まって見える横顔に汗が伝っている。
「…せめて、背負うのにしてください…」
見ていると額の出血が増した気がしてクラクラする。
おなまえは視線を伏せて芹沢の肩に顔を埋めた。
おなまえの声は小さかったが、この距離で聞こえなかった訳がないのに芹沢は聞こえなかったかの様に降ろす素振りを見せず、おなまえは諦めて身を寄せた。
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