バサバサと音を立てて読み終わった新聞を畳む。
今日も今日とて暇だなあ、と思いながら机に肘をつき時計と睨み合った。


--…モブはまだ学校。予約客もナシ…と。


一人の客も訪れないまま四時間が経とうとしている事務所内。
既に事務仕事は粗方終えてしまったし、塩も茶もストックは十分。
持て余して携帯を無意味に開くと、静かな室内に外から階段を登る足音が響いた。
それは迷いなく事務所入口の扉の前で止まり、急いだ様子で三回ノックをすると返答を待たずにドアを開ける。


「! いらっしゃー…ん?何だおなまえか」
「新隆!あのね…」
「や。ちょーど良かったわ今暇で死にそうだったんだ。ちょっと面白いコトしてくれよ」
「聞いてあのね!」


現れたのはパーカーのフードを目深に被った恋人のおなまえで、たまに相談所の仕事を手伝って貰うこともある。
「今日お前仕事じゃなかったっけ?まあ茶でも出すわ」とおなまえの横を通り抜けようとすると、霊幻の腕におなまえが縋ってきた。


「待って!聞いてって…ううん、見てコレ」
「ん?何…」


片腕で霊幻の腕を引き留めたままおなまえがフードを脱ぐと、彼女の頭頂部にはモフモフと柔らかそうな短毛に覆われた犬猫のソレのような耳がついていた。
露わになったソレに霊幻は一瞬言葉を失う。
しかし二度瞬きをすると「…え…コスプレ?」と訝しみ半分ニヤケ半分のような表情でおなまえに向き直りその肩に手を置いた。


「おなまえ…俺が面白いことしろって言ったからっていつの間にそんな芸を…」
「ちっ!違うの!良く見て!コレ本物みたいなのっ、カチューシャとかじゃないの!…ほら…」
「またまたぁ〜……………?」


諭すような声音の霊幻に首を振ると、おなまえは自分の頭についた耳を指差す。
するとおなまえの感情に呼応してか細かくパタパタと耳が根本から揺れて周囲の音を聞くように少し外側に捻じれては正面に戻った。
霊幻はその耳に手をやり付け根を探る。
すると指先はおなまえの頭皮に触れて耳の継ぎ目が無いことを確かめた。


「…おなまえさん。コレに心当たりは?」
「……実はね…」
「あるのかよ」


言い難そうに少しだけ顔を俯かせて、おなまえは心当たりを語り始める。

近頃肩が重い気がしていた。
ちょうど霊幻が客を除霊(マッサージ)中で、モブに「私も除霊が必要かなあ」なんて零したところ、「あ。そうですね、そんなに害はなさそうですけど」と言われた。
まさかと思ったがモブが冗談を言うような人間ではないことも理解している。


--「え…憑いてる、の?本当に?」
--「はい。猫の動物霊が…まだ子どもみたいです」
--「あっ、なんだ仔猫かぁー」


得体の知れない恐ろしげな悪霊でなくて良かった、とホッと胸を撫で下ろすおなまえに、「背中によじ登ってますけど、祓いますか?」とモブは尋ねた。
しかしおなまえは首を横に振ってそれを断る。


--「ううん、仔猫なら可愛いしいいよ。私にも見えたら良かったなぁ」


仔猫ならば無碍に扱うこともない、そう油断していた。
そんなやり取りをした翌日、朝起きたらしっぽが生えていて驚き鏡を見たら頭上に立派な猫耳があった。
仔猫の霊の仕業と思しきこの現象をどうにかしたくて、耳としっぽを隠しながらここまでやって来たのだった。

おなまえの話を聞いて、霊幻は「ふむ」と顎に手をやる。
視線はおなまえの感情に呼応して反応する猫耳で止まって、どうしたものかと考え込んだ。


「…塩で除霊は……」
「んー……一応やってみるか」


--どうせ効かねぇだろうけど。

とは不安そうなおなまえの手前霊幻は噤んでおいた。
一呼吸置いてからぐわし、と内ポケットの塩を鷲掴みおなまえに向かって激しく撒き散らす。
ビシビシと叩きつけられる食塩に顔を顰めながらもソルトスプラッシュを身に受けたおなまえは塩だらけのままおそるおそる霊幻に尋ねる。


「……ど、どうですか……?」


塩が直撃しないように目を閉じたおなまえを前に、霊幻は静かに塵とりと箒を手にした。


「…耳が」
「耳が……!?」


もしかして消えてくれたのだろうかという期待がおなまえの声に滲む。


「イカ耳になってる」
「イカ耳!?」


パッと頭に手をやるとピンと外側に耳が張り出していて、フワフワと逆たった毛並みが指に触れた。


「……」
「まあ、モブが来るまでの辛抱だな」
「そんなあ……まだお昼だよ……」
「そんな格好じゃ外歩くのも不安だろ、モブ来るまで此処にいろよ。お客が来たらフード被っとけ」
「うう……新隆ぁ」


「情けない声出すなって、一生そのままってんじゃねえんだし」と言いながら床に落ちた塩を片付け終えると、霊幻は給湯室に消える。
ゴソゴソという物音の後部屋の主はティーカップと湯のみを持って戻って来た。
おなまえの座る椅子前のテーブルにそれらは置かれ、おなまえは揺らめく紅に映る自分の姿を見て静かに溜息を吐いた。
向かいに腰掛けた霊幻は「ま。落ち着けよ」と湯のみを啜る。
先程まで塩を投げつけられた不快感からか逆立っていた毛並みは元に戻り、今はペタンと下向きになっていた。


「束の間の非日常と思っとけば?似合ってんじゃん」
「…うん………あ、っっつ」


紅茶に口をつけようとしたおなまえがカップをテーブルに置いた。


「まさか猫舌になったのか?」
「え。舌沸騰するかと思ったけど、いつもの温度だった?」
「いつもの」
「…見た目だけじゃなくて、中身も猫……ってこと?」


おなまえは一層顔色を青くすると、少しでも猫要素を隠すようにまたフードを被った。


モブが来るまで、あと3時間。



---



明白に顔色を変えてしまったおなまえの前に、ふよりと柔らかな何かが差し出された。
毛足が長いふわふわなそれがおなまえに自分の毛並みを見せつけるように左右に細かく揺れると、思わず右手がそれを掴もうと伸びる。
既の所でそれは指先をすり抜けてテーブルの反対で先程同様フヨフヨとまるで「捕まえてみろ」と煽るように揺れてみせた。
おなまえの目の色が変わる。

と、霊幻が今まで一度も見たことがないような速度でおなまえはそれを鋭く掴み取った。
思わず霊幻の口から「おー」と感心の声が洩れる。


「すげーな。そんな早く動けたの」
「…何で猫じゃらしなんか持ってるの?」
「除霊アイテムに使えないかと思って昔買ったのを思い出した」
「ああ、そう…」


プイ、とおなまえは手を離すと同時にそっぽを向いて猫じゃらしを視界に入れないようにする。
しかし狭い事務所の中では真後ろを向きでもしなければチラチラと視界の端に揺れる猫じゃらしを認めてしまって、気にしないようにと努めているのに意識してしまう。
勝手に耳や尻尾がぴょこぴょこ動いて、おなまえは自分のフードを強く抑えて反応する耳を無理矢理止める。


「尻尾の先が動いてるぞ」
「やめて。見ないで触んないで」
「冷てぇな〜気を紛らわせてやってんのに」
「モブ君来るまでそっとしておいて…」


ツンツンと好奇心から霊幻がおなまえの尻尾の先に触れる。
その反対の手には未だ猫じゃらしが握られていて、とうとうおなまえは瞼をぎゅっと瞑って勝手に動くものを追おうとしてしまう自分が落ち着くのを待った。
しかし構わず霊幻はおなまえの毛並みを整えるように尻尾を撫でてくる。
その手をぺちんと尻尾で柔く叩くが、全く意に介していないようだった。


「パッと見、猫っぽいのは耳と尻尾だけだよな」
「…うん。一応姿見で確認したけど…あとは…爪?こうクッってすると鋭くなる」
「………」
「”肉球はないのかよ”みたいな残念そうな顔しないでくれる?」
「あースマンスマン」


もう温くなった頃合いだろうかとおなまえは恐る恐る紅茶に再び口を付けた。
まだ熱いとは感じるが、火傷する程ではなさそうでコクリと一口ようやく飲み込んだ。


「高い所から落ちても五点着地できるようになってたりする?」
「試してないからわかんないよ、コワイし」
「体が柔らかくなってたりは?」
「……」


試しに立ち上がって前屈してみた。
普通に床まで指がついて、猫耳が生える前と変わらないようにも思える。


「別になんとも…ふぎゃっ」
「お。手のひら全部つくんじゃねぇか?」
「重たいよ新隆…」
「フム…マタタビが無いのが悔やまれるな…」
「ねぇ面白いからって色々実験しようとしてない?」
「ハハハそんなまさか」
「……」


霊幻はおなまえの背中から身を降ろしてソファーに腰かけた。
解放されたおなまえも同じように座るが、その目は霊幻を訝しむように細められている。
その視線に一度だけ咳払いをしてから、霊幻は切り出した。


「……語尾ににゃあってつけてみて貰っても?」
「イヤ」
「そこをなんとか」
「ヤダ」
「今だけなんだし」
「……」
「あと3時間もしたらモブ来るだろうし。そしたらもう猫のおなまえは見れない訳だろ?勿体ない。こんなに可愛いのに」
「…可愛い…?」


への字に曲げられていたおなまえの口が少し緩んだ。


--これは…押したらイケる……!


霊幻は胸の内でこのパターンのおなまえなら何だかんだで言うことを聞いてくれるとわかっている。
このまま済し崩しに「にゃあ」と一言貰えれば、今後おなまえを揶揄いたくなった時のネタにもなるし何より今、面白い。

霊幻はウンウンと頷きながらさり気なくポケットから携帯を出してみる。


「可愛いぞ。写真撮ってイイ?」
「それはヤダ」
「えー。じゃあ語尾ににゃあつけてくれよ」
「…………にゃあ」
「”新隆大好きにゃ”」
「絶対言わないにゃ」
「ケチ…ま、いっか。面白かったし。ヨシヨシヨシ」
「やめてよホント猫じゃないんだか……」


嫌がりながらも要求に応えてくれたおなまえに、霊幻はおなまえの顎下を撫でてやる。
首元にやってきた手を警戒しながらもそのまま撫でられたおなまえは霊幻の手を退けようと片手を添えたが、まるで子供の頃に頭を撫でて貰った時の嬉しさや幸福感が沸き上がって来てその感覚に瞳をうっとりさせた。


「……あれ…?」
「ん?」
「なんかそれ気持ちいい…」


本当の猫のようにスリスリと霊幻の手のひらに顔を擦り付けて、小さくゴロゴロと喉を鳴らす音が聞こえた。


「どういう気持ちイイ?」
「マッサージして貰った時の気持ちよさに…”なんかしあわせ〜”って感じの気持ちい」
「フーン」


さっきまでの警戒心はどこへやら、おなまえはお行儀よく霊幻に向かって座り直すと「もっとしろ」と言わんばかりに「ん」と顎を差し出している。
霊幻がスリスリと擦る指を止めると、うっとりと閉じていた目を少しだけ開けて続きを催促された。
まるで本物の猫のようでつい霊幻も顔を綻ばせる。

しばらくそうしていると、おなまえは霊幻の膝に頭を乗せ丸まった。
顎下が撫でられなくなったのでフードを脱がせて、おなまえの艶やかな髪を指先で梳くように滑らせる。
滅多に甘えてこないおなまえが自分に身を任せているのが小気味良くて、髪を撫で続けていた手のひらがするりとおなまえの耳に伸びた。


「…ん」


フワフワな毛並みを楽しんでから内側の縁をゆっくり親指の腹で擦ってやると、おなまえが身じろぐ。
閉じていた瞳が開かれて横目に顔色を伺われていることに気づき、霊幻は手を止めないまま「ん?」と眉を上げてみせた。
耳はおなまえの性感帯のひとつだと知っていながら避けられたり擽ったがられないよう慎重に触れている。


「気持ちいいか?」
「………うん…」
「お前の毛並みフワフワしてて俺も気持ちいい」
「……、そこばっかりやめて」
「ん?わかった」


触り心地の良い耳からようやく手を離して、髪を通り背を過ぎ、丸まった身に沿っていた尻尾の付け根に霊幻の手が移動する。
直後おなまえが起き上がろうとしたのを察して反対の手で肩を抑えた。


「あ!……らたか何その手」
「だって耳ばっかりはダメだって言うから」
「や。ヤダそこ」


拗ねたように口を尖らせる霊幻の口ぶりはまるで子供のようだが、尻尾の根元を親指と人差し指で柔く掴んで中指で猫の毛と肌の境目をクルクル撫で回してくる手つきには無邪気さなんて欠片もない。
腰が浮きそうになる感覚が走り堪らずもう一度身を起こそうとするが、霊幻に尻尾の根元を指の腹で規則的に叩かれた途端「ぁ、」と声が洩れて力が抜けてしまう。


「ゃ……あ、何、それ……ソレ気持ちい」
「気持ちいいか?」
「やだ、なんで…ふ、ぅ、あっあ」
「…猫ってここにフェロモンのツボとか色んな神経が集中してるんだと」


霊幻の手の動きに合わせて声が上がってしまうのが恥ずかしいのに、止められずにおなまえは自分の手で口を塞いだ。
それがいじらしくて、霊幻は肩に置いていた手を滑らせておなまえの手をつつく。


「こーら。折角の声が聞こえないだろ」
「バカ、ゃめ…っモブ君くる、でしょ」
「まだそんな時間じゃねえよ」
「っ、お客さん、来るかも…」
「来なきゃいいんだな?」
「ち……手、やだぁ」


一瞬躊躇ったおなまえの隙をついて再び一定のリズムで優しく叩くと、おなまえが泣きそうな声を上げた。
その声とは裏腹に、尻尾はくるりと霊幻の手に絡んでくる。


「じゃあコレはなんだよ?」


ニヤリと笑うとおなまえは羞恥からか涙目で霊幻を睨んだ。

--可哀想に、そんな目をしても余計に煽るだけだぞ。教えてやらないけど。

胸の内だけで指摘してやって、おなまえに自分の腕を見せると一層その顔の朱が増した。


「か、体が勝手に…イヤなのに、ぅ、あ」
「イヤなの」
「だ、て…あっ、はずか、しい」
「恥ずかしくない」
「う、」


今まで散々快感を覚えることは恥ずかしくないと教え込んでいたのに、半分猫の体になって感覚が違うのか、未知のものに抵抗するおなまえの心と体が正反対の反応を示す。
本気で嫌な時はとっくにビンタのひとつやふたつ貰うので、霊幻はそうでないのをいいことにおなまえの丸い尻を撫でている。


「へんたい、」
「んなのおなまえはよく知ってんだろ」
「か、彼女が、こまって、んのに!ぁ…」
「モブが来たら元に戻れるだろ。なら」


ジュルリと首元からネクタイを外すと、おなまえの抵抗の声も躊躇いがちに弱まっていく。
大人しくなったおなまえを抱き起こすと二人の視線が交わる。


「ちょっとだけ楽しんでみたってバチあたらないと思うぞ」
「…新隆が楽しみたいだけじゃないの」
「不安なまま時間過ごすより有意義だろ?」
「……バカ。すけべ」


チラリと時計を気にする素振りを見せてから、おなまえは観念したように霊幻の首に腕を回した。
悪態をつきながらも応じる彼女に「ハイハイすいませんね」と笑って唇を寄せる。
少しだけ開かれた隙間に舌を差し込むと柔く迎えてくれるおなまえの舌触りがいつもと違うことに気づいた。
ザリザリと舌の凹凸が人のそれより目立って、舌同士が触れ合う時は霊幻の舌を擦り、離れる時は少しだけ引っ掛かりがある。
いつもと違うその刺激が後を引き、つい貪るように唇に夢中になっているとおなまえが霊幻のスーツを脱がせてくる。


「ん…は、新隆ぁ…」
「…悪ぃ。ザラザラしててすげーイイ」


皺にならないように脱いだジャケットをソファーの背もたれに掛けて、服の裾から手を差し込み構ってやらなかったおなまえの胸を手繰る。
いつもは自分の方がキスをせがむのに珍しいと思っていたおなまえは「…舌?」と控えめに舌を出して聞いた。
胸元に口を寄せながらその赤い舌を見上げると、その視線におなまえが目を細める。


「舐めてあげよっか」
「……マジ?」


思わぬ提案に顔を上げる。
おなまえが自分からしてくれるなんてと期待に染まった霊幻の瞳におなまえは赤い頬のまま「その気にされちゃったし」と恥ずかしそうに呟いた。
まだ理性がある内から積極的なんて珍しいなと思いながら気が変わらない内にと自身を取り出すと、徐ろにおなまえの服を捲りあげてその白い胸を晒す。


「ぅえ、な、何」
「胸挟みながらやって」
「………えっちめ」


僅かに顔を顰めるが、結局霊幻の言う通りに胸を寄せて自身を包むと谷間から顔を出す亀頭に舌を這わせるおなまえ。
先走りを舌先で掬いとってから隆起した舌腹で浮き出ている血管をなぞられると想像以上の快感が走り思わず腰を突き出した。
汗ばんだ谷間の抵抗に構わず抜き差しを繰り返すと、寄せられた胸の隙間から自身の先が見え隠れする。
深く進むとおなまえの舌が迎えて、腰を押し付ければ雁首を口に含みながらザリザリと敏感な裏筋を愛撫され、荒く息を吐きながら「それヤバ」と零した。
霊幻の声を聞き付けてピクリとおなまえの猫耳が動き、扇情的な視線が絡み合う。


「ひもひぃ?」
「は…、…すげーイイ……も、出そう」
「出しちゃう…?」
「…っ、…出すならこっち」


熱く膨らんだ先をべろりと舐め上げられながら、擦り合わせているおなまえの膝を割ってその中心に触れた。
しとどに濡れて貼り付いた下着の脇から秘所を指でなぞると柔らかく飲み込もうとしてくる。


「まだそんなしてねーのに随分じゃん」
「新隆がよさそうにするからだもん」
「それでかよ。かわいー」
「かわいくな……っあ、ぁ」


いつもより感じやすくなっているのか、ザラついた場所の襞をこそぐように擦ると蜜が溢れておなまえが喉を反らす。
ぐちぐちと指の根元と恥丘の間で溢れた愛液が音を立て、小刻みに震え始めた中が埋まった指を締め付けていく。


「あぁ、っ……ありゃ、たか……ひ、ぅ」
「イキそ?」
「は、ぁ……ん、あらたか、ので…イキた…ぃ…」


おなまえは強請るように腰を揺らし、霊幻の腰に尻尾を巻き付けた。
その様に霊幻は笑みを深めて「やぁらしー」と煽りながら自身の先をおなまえの花弁に擦り付ける。
溝をなぞる度に入口がひくついて、霊幻を飲み込もうと吸い付くようで気持ちがいい。
グイと尻尾が体を寄せるように引っ張ってきて、屈んだ上体を抱き締めて「はやく……」とおなまえが腰を浮かせた。


「こんな猫、いたら毎日可愛がるわ」
「ぅんっ、可愛がって…いっぱいしてぇ」


急かすように霊幻の首や耳にキスをするおなまえの背を抱いて、泥濘に自身をうずめていく。
入った先から絞り上げるように締め付けられて、負けじと腰を奥へと叩きつけると甘い嬌声が耳を擽った。


「あ!ぁ、んっ…、きもちい…っ、ひゃう…あぁあっ」
「すげー締まる……っ、俺もめっちゃイイ、」


貪る様に互いに舌を絡めながら深く抽挿を繰り返す。
おなまえの丸い尻を抱いて最奥を小刻みに捏ねると背を反らしておなまえが達した。
どくんどくんと脈打つ様に痙攣する中にたまらず霊幻も奥に吐精して、尚も吸い付く子宮口に鈴口を押し付け余韻に浸る。
荒く上下するおなまえの胸元にキスをすると、気怠げに潤んだおなまえの瞳が霊幻を見つめた。


「……結局事務所でしちゃったあ…」
「まあまあ。誰も来なかったし」
「そういう問題じゃないって!…ああ……」


職場なのに…とフードを目深に被り直して後悔しているおなまえの体を、後始末を済ませた霊幻はタオルで拭いてからボディシートで清める。
いつの間にか脇に投げ捨てられていたおなまえの下着を拾って「……流石にモブが来る前には乾かねーな…」と呟くと勢いよくその下着が奪われた。


「干すつもり!?やめてよ!」
「じゃノーパンでいるか?」
「……コンビニ行ってくる」
「オイオイ待て待て待て!」


青い顔で外に出ようとするおなまえを慌てて引き留め、霊幻は「俺が行ってくっから。留守番してろ」と言い聞かせる。


「わかった…ありがとう」
「鍵開けるなよ。誰が来ても、だ」
「は、はい」


「あとリセッ〇ュして換気頼んだ」と言い残し、ガチャリと鍵を掛け霊幻が出て行った。
一人残ったおなまえは言われた通りに窓を開けて部屋中をスプレーして回る。


「……はぁ、次からどんな顔してここに来ればいいの…」


曲がりなりにも職場。しかも中高生も来るこんな所で。
おなまえは時計を見上げ、あと30分もすればやって来るであろうモブに”こんな大人たちがいる職場でごめん”と懺悔の念を込めて両手を組んだ。




------
ケモ耳夢主を除霊する裏
Back

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -