「いいんじゃないですか、秘書」
「え。いいのかよ」


最近この事務所に女子高生が通ってきているらしい。
私はまだ出会ったことがない。


「え?何か不都合ありました?」
「だってもうウチには居るだろ、秘書」
「…モブ君?」
「なんでだよ」


霊幻さんはそう言うと年甲斐もなく唇を尖らせている。
本当に子供の目がないとなると一気に子供っぽくなる人だなあ、とぼんやり思った。

その噂の女子高生が自分を霊幻さんの秘書と言い張って聞かないことに、霊幻さんは悩んでいるそうだ。
悩んでいると言ってもそんなに深刻には考えていないみたいで、どちらかと言えば愚痴りたいニュアンスの方が強い気がする。


「賑やかになるし、その子女子高生なんですよね?華やぐじゃないですか」
「……だからさ、もうウチにはその華があるだろって言ってんの」
「…え。………え?」


女子高生かぁ私も会いたいなぁ。
私がいる時に来てくれないかなぁ。
とか思っていた矢先


「おなまえは俺の秘書だろ」


聞こえた声に手元の資料から視線を上げれば、ピシリと向けられた人差し指。
華…?え??


「私霊幻さんの秘書だったんですか」
「なんだと思ってたんだよ今まで。俺の代わりに応対やら経費処理やら管理してたろ」
「それするのが秘書なんですか」
「そうだよ、散々俺をサポートしてただろ!」
「サポート!」


そんなつもり全くなかったせいで衝撃と動揺が…。


「…え何本当にわかってなかったの」
「普通に分担してるだけと思ってました。…そうだ…思えば何で芹沢さんでなく私に言ってくるんだっていつも気になってたんでした」
「マジかよ…」


お互い予想外の事態に、とりあえず落ち着こうとお茶を啜る。
…うん。熱すぎないし温すぎない。
これなら霊幻さんだってグイッと飲める。
一度口をつけた湯呑みをしばらく見つめてから、霊幻さんは無言で頷いた。


「…やっぱり秘書はお前がいい。次来たらキチッともう1回言うわ」
『クビにするんじゃねーのかよ』
「まだ会ってないのにクビはちょっと嫌です。JK気になる!」
『ただ女子高生に会いたいだけじゃねーか』
「若い気を分けてもらうの」


黙って見ていられなくなってとうとうエクボさんがツッコミはじめてきた。
会って気を吸うとか正気の沙汰じゃねえと言われれば、吸うんじゃないです!目の保養的な充電的なアレですと言い返す。
すると霊幻さんは目を細めて遠くを見つめた。


「充電…できたらいいな。会って」
「え?どういう意味ですか?」
『逆にお前がエネルギー奪われるかもしれないぞ』
「その女子高生はそんな能力を持っているんですか…!?」


いや、一般人だけど。と声を合わせる二人に、更に未だ会ったことのない女子高生への想像が膨らむのだった。



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03.22/未だ見ぬJK→秘書の自覚0%
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