「私たちが同じ人間だということ。同じ人間を殺害すること。不思議と罪は感じないの。世界は弱肉強食という言葉で成り立っているというのに対して、何故人間という動物だけ、食物連鎖から外れているのか。多分外れていないけど、外れているように見えるくらい裕福な生活を送るのか。無駄なものばかり排出していく人間は誰からか殺されるべきだと思った。勿論ミサも例外じゃないけど。そう両親の死がきっかけで強く思い始めたから、月の側に居る。」

小さなキャンドルに火が灯った1LDKの彼女の趣味であろうゴシック調の風味が感じられる小さな部屋でくるくると周りながらも真剣な顔で静寂な空気を漂わせる小さな人間、弥海砂。
その隣には殺人者の手伝いをする本の本来の所有権を持つ死神、レム。

弥は彼に殺されようと、深く心に決めていた。それが唯一、自分の最初で最後の幸福だと思っていた、のに、彼は遠のいた。
弥の唇が酸素と が入り混じりながら触れ合った。恋人という名の大量殺人犯、夜神月に呼吸をする度に遠のいていく気がして、弥の生きることとはまるで恐怖体験。それはまるで赤の他人が包丁等で弥の心臓に突き刺さすことなんかよりもずっと強く痛く感じ、祢が感じる生とは、畏怖に近かった。
世界はとても大きくて人間はとても小さくて、こぼれ溢れる言葉は時に迷子のようだ。悩み事すら馬鹿のする事だと解釈した。言霊など三秒後には闇に沈んでいく。明かりが点かない電球を買うように、彼を愛す事は無意味の言葉ひとつで事足りていたのは弥は気付いてはいた。意味もなく、ただただ唇は命の循環に付いていく。

「ミサは、死の恐怖という概念はないのか?」
「ううん、そういう解釈しないで。病気に侵されて死ぬのも、偶然事故に遭ってそれはまるで悲劇のヒロインのように死ぬのも、寿命を迎えて家族に看取られながら死ぬのも、嫌なだけ。」
「どうして?」
「ミサは月が側にいないと駄目なの。そうじゃなきゃ死ねない。お願いわかって。不思議そうな顔をしないで。月の腕の中じゃなかったら、死ねないの。月以外の“何か”で死にたくない。だって、そんなの、気持ち悪い。」

今日も弥の唇は酸素を必要としている。

110118
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