ゲイだと知った。ミジンコ程度の噂さえ無いし、ただ私の薄っぺらい推測に過ぎなかっただけなのに、本当にまさかだった。
会話中に気付いたのだけど、彼と同じように、私も黒神さんには人吉君を守ってほしい、幸せにしてほしい考え方をしていた。出来たら彼にも人吉君を幸せにしてほしいとただただ願っていた。黒神さんも、私も、阿久根先輩も、不知火さんも、大体の皆が人吉君を好きでいる。きっと何年も同じことを口に出来るだろう。でも、彼はそういう好きじゃなくって。阿久根先輩は、本当に彼を好んでいたようで。少し、胸の奥に悲しみが染み込んだ。別に阿久根君を恋愛対象として見ていないし、同性愛者という事実に偏見も持ってはいないのだけど、何かしらの感情が胸の奥に突き刺さって、切なくなった。
静かに口を開いてしまった私の言葉のそれには彼にとって残酷でしかなかったことに気付いた時はもう遅くて、ゆるやかに目の前を通過していった。

「あまりデリカシーのないことを言わないでくれるかな‥。傷つく」
「‥ごめんなさ」
「謝らなくていいから。反省をしてくれ」
「…」

ああ結構機嫌を損ねさせたみたいでいつものように苦笑いさえしてくれない。

「誰にも言わないでくれるかい?」
「えっ?」

沈黙が怖くってあたまの中で思考を瞬時に巡らせてはみたのだけど、きっと私よりあちらの方が臆病だと心に残る。
彼は表情が変わって羞恥と非情から苦しそうに、せがんでいって私は少し戸惑ってしまう。行儀良く会話出来る術を、私達には欠片さえ身に付いていない。

「僕の都合ばかり言ってごめんね。君には何の得にもならないことだけど…」
「……そんな、言わない、です…」

彼の唇が、微かに憂いを帯びて、ふるえてた。
そんな表情されなくても、お金よりも大事なものがあることをあなた達が教えてくれたから、私のせいでこの関係を崩したくはないと、心に決めた。


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