僕は僕が大嫌いだ。愚かで卑しくて、暴君だ。そう、少なくとも世界が敬う、君みたいな人間に好まれる様な奴なんかじゃないんだ、僕は。
と、口から滑り落ちた言葉を巧みに汲み取る心体共に大人びた彼は、彼の愛用する銃を目に捉えきれない速さで持ち、その銃口が僕の脳天に打ち付けられた。いつからだろうか、この行為に僕は対した抵抗はしなくなった。しても無意味だと理解出来るし、寧ろ彼の日常茶飯事だと知っている。


「唯の戦闘マニアがうだうだ言ってんじゃねえ。お前がそんなに卑下する必要はねえと思うぞ」
「どうして、さ」
「‥愛される事に慣れてねえのか」

当たり前だ、僕は愛される様な言動、行動、何一つした事なんてない。身に覚えがないんだよ、赤ん坊。是の思考は僕が君の事を気に欠けていないわけではなく、その理由が不可解なだけであり、寧ろ積極的な君が僕は単純に好きだと思う。

視線を外す事を赦されない様な彼の強い瞳には、何か特別な秘密を隠し持っている様で僕は苦悶する。彼はとても偉丈夫で強い精神力を持つ男で、僕から見ても十分過ぎる程の完璧さで綺麗な人物だった。僕の理想、真善美と言ってもいいように、彼は眩しくて、僕は不快に感じるのだ。
黒のソファーに男二人、見ていて気分の良い風景ではない。

ふと銃口が僕から離れる。


「お前がほっとけねえんだ、雲雀。言っておくが決して同情なんかじゃねえからな」

知っているよ、愛情、だろ?

「返事はいらねえぞ。必ず振り向かしてやるから」

微笑みながら彼は僕の元を去る。彼の後ろ姿が見えなくなってから何故か無意識に溜め息が出た。僕の心情に気付いていながら何処からあんな自信が出るのか理解に苦しむ。相当羨ましい性格をしてると見えるね。瞼を閉じても、あの強く逞しい眼が忘れられなくて、いつの間にか僕の脳が記憶している事に気付く。

「本当‥、羨ましい性格をしているよ、‥赤ん坊」

自然と笑みが零れる僕も相当応えていた。


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