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悪魔は甘美な罠を張る - 8



「あーあ、目の下まで真っ赤じゃん。汗もすげーし、精液くせーし、今のお前、すっげー惨めだなぁ」

「ひっ、うぅっ、ひっ、うーっ、う、ひぐっ」


泣き崩れる俺を組み敷いたまま、瀧本が髪を梳く。その手の平すら、もう払うこともできない。


「俺は言ったよな。使いどころを間違えんなって。
苛めから守ってやっただろ? 孤立するお前の隣にいてやっただろ? そんな俺が急にいなくなって、また惨めになっただろ?
いつだってお前は俺に縋ってこれたのに、なんで勝手に消えてんだよ意味分かんねー、お前なんなの? って、俺が聞きてーよ」


髪を梳く指の繊細さとは裏腹に、瀧本の声は低い。


「なんで利用しなかった」

「したっ、ら……っ、今度はたきもとが、おっ、俺を苛めんだろ、がぁ……っ」

「当たり前だろ。お前がそれ分かってんの知ってて優しくしてやったんだ」


悪びれた様子もなく言い放つ瀧本が、中に納まる指を増やした。強くなった圧迫感に足を閉じようとして、瀧本の腰にかかとがぶつかる。


「苛めてくるクソ共、騙そうとする俺、そんな最悪の状況でもお前がどう抜け出すか、俺はこれでも楽しみにしてたんだ。毎日毎日、飽きることなく甘やかしてやったんだ。
なのに勝手に消えるとか、そりゃねぇだろ。勝手に終わらせてんじゃねーよ」

「ふざっけ……っ」

「ふざけてんのはてめぇだよ、堀田。はじめに拒まなかったのはそっちだろ。利用したくなきゃ俺を拒めばよかった。なのにそれをしなかったのは寂しかったからだろーが」


核心を突くような戯言をほざき、引き抜いた指の本数を一気に増やした瀧本が奥を穿つ。瞬間、俺はあっけなく果ててしまい、痙攣する体から力を抜いた。


「だから、」


ずる……っ、抜かれた指の感触にさえ、放棄した体は健気に反応を示す。


「今度こそ間違えるな。
俺を利用してこの状況から抜け出してみろ。ただし逃げてみろ? 次はこんなんじゃ済まさねぇぞ」


な? と、俺の耳元で囁く瀧本の声が鼓膜を舐め上げる。
呆然と見上げる男の顔は、悪魔なんて表現じゃあもう、可愛らしい。




 


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