「僕たちは、なにも自分たちのためだけに神宮司さまに食堂に来て欲しいわけじゃない。激務の中、ちゃんと食事を取っているか、この目で確認したいんだ。確かにそりゃ、神宮司さまの姿を見ることができるのは嬉しいけれど、私利私欲だけじゃ、ないんだ」
「はい、存じ上げております。神宮司さまも真辺さまたちのお気持ちは十分ご理解されていると、南雲は信じております」
「……南雲さん……ありがとう、そう言ってもらえると、少しだけ気が晴れるよ」
じゃあね、と背を向ける彼らに頭を下げる。
その足音が遠ざかるまでずっと、僕は悔しさから歯を食いしばった。
「失礼します」
真辺さまたちが去ったあとの食堂では、重森さまが気を良くしながら食事を取り、それを見守る生徒会の方々のいつもの風景があった。まだ食べ終えていない料理にすまないなと謝罪を口にして食堂をあとにした神宮司さまを、それでも重森さまはずいぶん引き止めていたのだが、神宮司さまがそれを聞き届けることはなかった。
そうしてあれからすぐさまシェフが作った夕飯を携えて、僕は生徒会室の前へとやってきた。扉をノックし、入室の許可を頂いたあとに中へ入ると、そこはいつにも増して書類が散乱している。
「南雲か。さっきはすまなかった。シェフにもそう伝えてくれたか?」
「はい、神宮司さま。けれどお詫びしなければならないのはこちらのほうです。ご不快な思いをさせてしまい、誠に申し訳ありません」
「不快、か……いや、いくらお前の頼みとはいえ、食堂に行けばどうなるかは分かっていた。軽率だったのは俺のほうだ」
「神宮司さま……」
聡明な彼は、僕が食堂で食事を取って欲しいと願った理由を、きっと初めから分かっていたのだろう。だから、場を収めるためとはいえ、自分を気遣ってくれた、思ってくれている真辺さまに謝罪させたことが心苦しいのだろう。
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