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南雲をお呼びでしょうか - 6



「お前たちの言いたいことは分かった。だが、ここは食堂だ。食堂は喧嘩をする場所か? 違うだろう、ここは食事をする場であって、決して見苦しい喧嘩をする場ではない」

「……はい、大変失礼いたしました」

「でも明臣! こいつらが最初に突っかかってきたんだぞ!? 悪いのはこいつらのほうだろ! 俺に謝れ!」


神宮司さまの言葉に頭を下げる親衛隊の方々は、みな強く拳を握っているのが遠目でも分かる。すぐにでもハンカチを差し出したいところだが、ここで僕たちウェイターが動くことは許されていない。所詮自分はただのウェイターに過ぎず、神宮司さまがチーフに言いつけた言葉一つで動きを封じられるほど、僕は蚊帳の外なのだ。


「真辺、形だけでいい。謝れ」

「っ……! も、もうしわけ……ありません、でした……」


神宮司さまの親衛隊長である真辺さまが、重森さまに頭を下げた。その後ろでは他の親衛隊の皆さまが「真辺さまっ!」と悲愴な声を出していたが、重森さまは「俺は寛大だからな! 許してやる!」と打って変わって笑っている。
僕はすぐさま厨房に戻り、チーフとシェフに一言告げ、プチフールを箱につめた。


「真辺さま」

「……南雲さん」


神宮司さまに言われ、素直に謝罪を述べた真辺さまたち親衛隊の方々が暗い雰囲気の中、食堂から出て行くところを引きとめた。ぐっと涙を堪えている方や、堪えきれずに涙している方もいる。
僕はその長たる真辺さまに近づき、箱に詰めたプチフールを差し出した。


「申し訳ありません。南雲の力が及ばず、皆さまの願いを果たせませんでした。後日お詫びに参りますが、今日はぜひ、こちらをお受け取りください」

「南雲さん……いえ、僕たち親衛隊の願いは、神宮司さまが食堂で食事を取ることです。その点においては感謝しているよ、ありがとう」

「勿体ないお言葉です」


差し出したプチフールを受け取った真辺さまは、静かな声でねぇ南雲さんと僕を呼んだ。




 


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