「おやすみ小虎、また明日」
「うん、また明日。気を付けて帰れよ?」
「はは、うん。大丈夫だよ、ありがとう」
深夜だというのに地上はまだ明るく、人の気配も多い。
見事決まったアイアンクローが気に入られたのか、送ると言って聞かない仙堂さんに押しこまれるようにして、酔いつぶれた新山さんが投げ入れられていたタクシーに乗り込んだ志狼に手を振る。
やはり酔っ払ったままの匡子さんは西さんや泉ちゃんに担がれつつも、なんとかタクシーに乗り込めたようだ。
こちらに手を振る泉ちゃんと隆二さんに手を振り返せば、四人を乗せたタクシーは走り出す。
「雄樹は仁さん家行くんだっけ?」
「うん、お泊りって約束してたからねー」
「へぇ、お泊りですかー」
「ちょっとトラちゃん! その顔止めてよもう、はずかしー!」
なんて、両手を頬で覆う雄樹は顔が赤い。酒のせいだけではないそれに微笑みつつ、寒そうにしている仁さんの元へ背中を押して送り出す。おやすみ、トラちゃん。なんて可愛い顔をして微笑む雄樹はやっぱり癒しだなぁ。
「コトラ、今日はありがとう。楽しかったよ」
「ノエルさん。良かったです、また皆で飲みましょうね」
「うん、今日はお粥を食べそびれたから、今度は一人でも来るよ」
「はい、お待ちしてます」
タクシーを拾った巴さんに声をかけられ、なんだか照れくさそうに笑うノエルさんに頭を下げる。こちらに気づいた巴さんは苦い顔をしながら、でも笑顔で俺に手を振った。
「さて、小虎くん」
「うわ、司さん……いきなり肩を組むのは止めてください。あと、体重かけないでください、重いです」
「えー、小虎くんは俺よりガタイ良いどっかの誰かさんにいっつも乗っかられてるでしょー?」
「……まだセクハラするつもりですか」
あはははは! 酒も入ったことでいつもよりテンションの高い司さんは、涙を浮かべながら俺の肩をバシバシ叩いてくる。ちょっとむかついてその手をぺちっと叩くと、彼はそれはそれは楽しそうに俺の頬を人差し指で突いて来た。
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