×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -

23 - 27



はっきりと告げられた言葉に一瞬で顔が熱くなる。繋いだままの手が澄んだ空気の中で火照って、恥ずかしい。
口を閉ざしたままなにも答えない俺に、玲央がちらりと視線を寄こした。


「まぁ、今回は撮影のタイミングに合わせて司が馬鹿しやがって、お前には寂しい思いさせたけどよ。あぁいや、そんなに寂しくなかったんだよな?」

「……前にちゃんと寂しかったって言いましたけど?」


以前のことをなぜか根に持っているのか、俺が茹ったタコのように顔を真っ赤にしたままジト目を向けると、玲央はいつのまにか視線を戻していて、言った。


「俺も寂しかった」

「へ?」

「メールも電話も、何回もしようか悩んで結局できなかった。お前との将来のために仕事優先してんのに、お前に寂しいって言われたらすっ飛んで行きそうだった。実際、言われたら無理してでも会いに行ってただろうしな」

「あの……玲央、酔ってる?」

「あんくらいで酔うか馬鹿」


繋いだままの手で軽く頭を小突かれて、その痛みで今が現実であることを思い知る。
つまり、あの玲央が、自分勝手でプライドの高いあの玲央が、寂しかったと口にしたのだ。俺に会えない時間を、寂しかったと言ったのだ。


「――……っ」


恥ずかしいやら疑わしいやら夢じゃないのか、なんて考えがグルグルと頭の中を駆け巡る中、最初に脳裏に浮かんだ思いは「卑怯だ」という感情。そんなことを言われて俺がどう思うのか、きっと玲央は知らないのだ。

なにか言おうと耽る俺に影が射す。何事かと上を向いた時にはすでに遅く。


「……やっぱ甘ぇ」


ひと気がないとはいえ、こんな住宅街のど真ん中で。まさかまさかの、玲央は俺にキスをしたのだ。


「れ、おっ!?」

「お前、次のテストで赤点取るなよ」

「へ?!」


こんな場所でなにをするのだと口を開く俺に、けろりとしている玲央は急な話題を持ち出す。百八十度どころではない話題の方向性に呆然とする俺に、玲央は笑った。


「テスト明け、旅行に行くから赤点は取るなよ。いいな?」


いいな? そう念を押す玲央に、俺はただ頷くことしかできなかった。
そんな俺の姿に気をよくした獣は、至極楽しそうに歩みを進めるのであった。




 


しおりを挟む / 戻る