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噴き出した玉子焼きを拭うことすらできずに呆然とする俺の後ろ、リビングと廊下を繋ぐ扉からこちらを見る玲央が、その金色の髪をふわりとなびかせて笑った。なんだかその笑顔に驚いた俺の体が、無意識に後ずさる。
一歩、一歩、近づいてくる玲央の姿から目が離せない。このまま動かなきゃ、ダメだって分かってるのに。なのに。


「小虎」

「!」


結局動けずにいた俺は、気がついた瞬間抱きしめられていた。首元に顔を埋められ、匂いを嗅がれる。それだけ近いのだから、こちらも玲央の匂いを感じとってしまい、脳がクラリと揺れていく。


「……はぁ、」


俺の匂いを嗅いでいた玲央が吐息を漏らす。その熱っぽさに体中が赤く染まるのが分かる。思わず伸びていた自分の手に気づき、俺はその手で玲央を突き放した。


「……なんだよ、あれ」

「なにが」


そんな俺の行動が不愉快なのか、玲央の声音が低い。豹牙先輩たちも俺の異変に困惑しているのか、黙ったままだ。


「なんっ、で……っ、こんなときに、あん、なっ!」


足が震える。涙腺が揺らぐ。感情が止めどなく押し寄せては、喉元につっかえて吐きそうだ。勢いよく顔を上げ、そちらにいるだろう玲央を睨む。けれど俺の視界は塞がれていた。玲央に、抱きしめられていた。


「悪かった。けど安心しろ小虎。こんなクソみてぇな茶番、もう終わりだ」

「……れ、お……っ」


なに一つ解決などしていないのに、どうして素直に安心してしまうんだ。なに一つ説明もされていないのに、どうしてもう終われると思うんだ。どうして突き放した手で、俺はこんなに玲央にしがみ付いているんだ。


「だからまずは、充電させろ」

「なんだ、それ……っ」


俺の首元に顔を埋めたまま後頭部を撫でてきた玲央に、俺はつい笑ってしまうのだった。




 


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