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苦しそうに笑ったお兄ちゃんが、開いたままの俺の口から指を離す。


「親父は露骨に俺を嫌っていったよ。だから俺もますます嫌いになった。次第にお前の前でも口論するようになって、おふくろもお前を守るようになって……俺は多分、もう兄貴じゃなくなっていた。
いつだったか、親父と口論したあとによ、お前が平然とお兄ちゃんって呼んだとき、なんかが壊れたよ。人間として終わったよ。俺はお前を、殴った」


知ることのなかったお兄ちゃんの本心。
すごく辛そうに、でも笑いながら言うお兄ちゃんの手に、そっと自分の手を重ねる。


「……でもお前は、やっぱり俺のあとをついてきた。ヘラヘラしながら、殴ると痛いって泣くくせに、俺にばっかくっついてきた。
恐かった……んだろうな、俺は。そんなお前が怖くて、余計に殴ったんだろうな」


ふぅ、と息を漏らしたお兄ちゃんが重ねた俺の手を握りしめた。すごく冷たくて、微かに震えているそれが、とても愛おしい。


「お前を引き取るって決めたのは、前にも言ったようにおふくろの遺言だったからだ。それ以上に……別れたときに見たお前の顔が忘れられなかったからだ。
でもいざお前が家に来たとき、俺の期待は裏切られたよ。
お前はな、あのとき、いや、もっとずっと前から俺を罵って良かったんだ。謝罪を求めて良かったんだ。
俺が最初に謝るべきだってことは分かってる、俺がこんなことを言うのもお門違いだって分かってる。
それでも小虎、お前は俺を怒鳴り散らすべきだった」


握りしめる手の力が増す。痛いはずなのに、それ以上に心が痛い。


「……殴れば、昔みたいになると思った。
余所余所しいお前を殴れば、昔みたいにお兄ちゃんって呼ぶんだと思った。
そんなことしか覚えてなかった。兄貴だった頃、どんな風にお前に触れて、笑って、一緒に過ごしたかなんて覚えちゃいなかった。
……けど、お前はまた俺の期待を裏切った。殴ったあと、お前はなんにも反応しねぇ人形みたいになっちまった」


ふいに見つめあっていた視線が外される。それでも俺は、お兄ちゃんから目を離せずにいた。




 


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