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「少し痩せたんじゃないか、玲央? バイトもほどほどにしときなさい」

「うっせーな。つーか痩せてねぇし」


助手席に座った玲央が堂々と煙草を吸っている。
祖父はそれを注意するでもなく、嬉々と運転を続けていた。
後部座席で鞄と共に並んだ俺は、そんな二人を横目に、外に興味を持ったふりをしていた。

都会の電車やバスから覗く風景とはまるで違う。
木漏れ日が舗装された道路をゆったりと照らしている。


「小虎くんもなにかバイトしてるのかい?」

「え? あ、あぁ、はい。その、飲食店……を」

「へぇ、飲食店! なにか作ってるの?」

「はい。お粥を」

「お粥? あはは、じゃあ玲央が風邪をひいても、小虎くんがいれば安心だ」


こうして、時たま俺にも声をかけてくれる祖父は、バックミラー越しにも笑顔を浮かべたままで。
それがあまりにも自然だから、夏休みに祖父の家へ遊びに来た孫の気持ちになってしまう。
――事実、その通りなのだけれども。

車で十分ほど移動して、ついたそこには古くて大きな日本家屋があった。
少し高台にあるけれど、家の二倍はありそうな庭は野菜や花が植えられている。
縁側から二、三メートル離れた場所に建つ犬小屋からは、おどけた顔をしてこちらを伺う柴犬がいた。


「あらあら、レオちゃんいらっしゃい」


柴犬を見つめていると、すぐ近くの縁側から白いエプロンをつけたおばあさんが現れた。
こちらも上品で、それでいてどこか若々しい。

――と、いうよりも。れ、レオちゃん……!?


「……ぶふっ」

「なに笑ってんだテメー」


こっそりと笑ったつもりだったのだが、二人分の旅行鞄を手にした玲央に小突かれた。
いつのまにか隣にきていた祖父に促され、みんなで縁側へと向かう。
縁側に膝をついて微笑む祖母の前に来て、祖父のときと同じように前へ一歩出た。


「はじめまして、小虎です」

「あらあら……はい、はじめまして。トラちゃんもよく来てくれたわねぇ。二人とも喉が渇いたでしょう? 今、冷たい麦茶を持ってきますからね」



 


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