突然のことに固まってしまうが、このままにしておくわけにもいかないし、お腹が空いていることは事実だったので口を動かす。
乾いた口内にはパサパサとしたパンが辛かったが、必死に噛み砕いて飲み込んだ。
すぐに焼きそばパンが出て行き、次にペットボトルの口が突っ込まれた。ごく、ごく、ごく。喉を鳴らして飲みこめば、余計に腹が減ってきた。
「少しは足しになったか?」
「え? ……あ、いや、余計に腹減ったかも」
「安心しろ。まだまだあるからよ」
「え? んごっ!?」
そうして、食べかけの焼きそばパンを一つ、おにぎりを二つ食わされた。
最後にペットボトルにある水を飲み干せば、空腹ではなくなった腹に安堵の息をつく。
落ち着いた状態で入り口を見る。なぜかそれまでいたみんなの姿がない。
「……玲央、あの」
「さて」
ギギィッ。志狼が座っていたパイプ椅子に、玲央が腰を下ろした。
「俺に聞きたいことがあんだろ? 言えよ」
なんてふんぞり返るものだから、落ち着いた脳が思わず「なんでやねん」なんて突っ込みを入れる。
だけどそれを理解して、自分が助かったことを実感すれば、そんな玲央に口を開いていた。
「玲央は、こうなるって知ってたの?」
「当然だろ。てめぇが銀狼と知り合ったときから、銀狼たちの計画は知っていた」
「……じゃあ、えと……なんで?」
「なにに対してだよ。まぁ、どうせなんで知ってて放置したかって聞きてぇんだろ? てめぇが銀狼の友達だって言ったから、だな」
「……え、あの」
落ち着け。そう思っているくせに落ち着くことがない。当然だ。
最初から最後まで振り回されて、落ち着いてくださいと言う方が無理な話なんだ。
なのに玲央は軽く息を吐き、俺をまっすぐ見つめる。実際は玲央がパイプ椅子に座っているから、どうしても見下ろされるのだけれど。
← →
しおりを挟む /
戻る