「話せば長くなるんだけどな、実はうちのチームに裏切り者……まぁスパイみたいなのが混じってて」
「すぱい?」
「ははっ、テレビみたいな話だろ? ま、しかたねーんだよ。玲央ってあんなんだからさ、チームの人数が増えても気づきもしねぇ。基本喧嘩のときは一人で派手に暴れるからさ、チームなんていらないんだけど」
「……」
チームなんていらない。とか、本当に兄貴はそう思っているだろうか。
なんだかんだいって、周りは見ている兄貴だから、認めていれば大切に思うはずなんだ。
それに隆二さんのことだって、兄貴は隣を歩くことを許している。
「だから俺と……俺が管理してたんだけど、ここ最近、ちょっと色々あってな」
「色々……」
「あぁ、だから昔みたいに少人数チームにしようかって、話してたんだよな」
「昔は少人数だったんですか?」
「あぁ、玲央が認めたやつしかブラックマリアの名前は語れなかった。今はまぁ……色々混じってるけど」
また俺には分かりえない話をされる。それでも詮索するつもりはないが、兄貴が中途半端なことをするとは思えない。
兄貴の性格からして少人数チームのほうが噛みあうだろう。だけどチームの人数が増えたことが事実で、そこにスパイとやらがいて……。
じゃあなんで、わざわざ少人数チームから今の形にシフトした?
「ま、それで今、裏切り者を探してるわけ。そんなときにチームのやつらがやられて、玲央が奇襲かけられて……キレたんだよな、アイツ」
「そう、ですか」
推理というよりはやはり詮索をしてしまう自分に引け目を感じながら頷く。
カツン、と音がして目を向ければ、なにかを企んでいるだろう顔をした兄貴がいた。その少しうしろでは平然としている志狼。
「隆二」
「あ? おう、いいのか?」
「あぁ」
戻ってきた兄貴が楽しそうに口角を上げている。
裏切り者を見つけたことが楽しいのか、人をいたぶるのが楽しいか、どちらもなんだろうと思えば少し、不安にも似たなにかが生まれていく。
「あぶり出す」
なのにふたたび、獰猛なそれが舞い戻る。
ライトが逆光となっているせいか、いつも以上の存在がそこにはいた。
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