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それからは大人しくバイトに勤しむも、結果は見事に惨敗。
誰一人としてカシストへ向かおうとしないのだ。


「やべーよ。マジやべーよ」

「なにがー?」

「なにってお前、このままじゃ俺たちクビだろ?」

「えー? 大丈夫だよ〜」


あはは、なんて暢気に笑っている内山に頭突きでもしてやりたい衝動を堪え、なにかいい方法はないかと思惑する。

そもそも、だ。
ここにいる連中のほとんどのデスリカに留まっていたい理由というのがブラックマリア、兄が総長を務めるチームがここから離れないという理由からなのである。
つまり早い話がブラックマリアの連中がカシストへ行ってくれたのなら事は簡単に済むのだが、内山いわく「ブラックマリアの連中がカシスト行くとは思わないな〜」だった。
理由を問いただしてみても「えー、あはは」とか、曖昧に誤魔化され……つまり、俺たちに打つ手はない。


「あー、やばいやばい。せっかくの初バイトが」

「トラちゃんは心配性だな〜。じゃあさぁ、数人殴って無理やり連れてく? 手っ取り早いよ?」

「それは客とは言わない。絶対にだ」

「えー?」


アホな内山に頼ることは諦めることにした。

本当にどうしようかと焦っているとき、俺はふいに壁に寄りかかっている女の子を見つけてしまった。
なんというか……不釣り合いなのだ。店内はこんなにもうるさいというのに、それが煩わしいとでも言っているような、暗い表情。よくよく見れば少し青い顔をしてないか?


「……ちょっと行ってくる」

「えー? なになにー? さくらやんの?」

「そうじゃないけど」


動き出した俺に興味を示す内山は、女の子の元へと向かう俺のあとをついてくる。注意するでもなく彼女の元へ向かえば、やはり、顔が青い。
できるだけ人当りのよさそうな笑みを浮かべ、俺は彼女に声をかけた。


「あの、大丈夫ですか?」

「……え?」


ぐったりとした表情の彼女が目線だけを俺に向ける。
今にも倒れそうな彼女を見て、俺が悪いわけでもないというのになぜか焦ってしまった。




 


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