月島くんについて知ってること。
・背が高い(山口によると190近いらしい)
・バレー部である(ナンタラブロッカーってやつ)
・お昼休みに音楽を聞いている(こっそり聞いたら何言ってるかわかんない曲だった)
・頭がいい(ソツなくこなしててすごいと思う)
・……えーっとー…あー……
結論。
・私は月島くんの事がよくわからない。
ダメだあ、と両腕を伸ばして机に突っ伏すと、頬のあたる机の冷たさが気持ちいい。
黒板の前に立った先生が何か言っているのは内容だけを何となく覚えて、ノートはあとで写そう。
今回の席替えで晴れてお隣さんになった月島くんは、いつもむすっとしている。
というか、むすっとしてるかバカにした笑顔以外の表情を見たことがない。
いつも冷静だから慌てる事もないし照れる事もないし、淡々と物事を進めるのだ。
「でー、この場合ー……」
勉強は天才型と秀才型のちょうど間くらい。
勉強しなくてもできる訳じゃないけど、ガリ勉でもないやつ。
そこそこやってればそこそこいい点とれるタイプの人間だ。ちなみに前回の定期テストで私は合計点数負けた。
賢い、ってこういう人の事を言うんだろう。
つまらなそうに授業を受ける月島くんを頬杖ついて見ながら、この人に弱点とかあるのかなと考えた。
お化け…も大丈夫そうだし、虫…とかも叫ぶほど苦手ではない気がする。
おばちゃんのきつい香水の匂いとかなら、万人共通で苦手だと思うんだけど、残念ながら私では用意できない。
次の休み時間にくすぐってみようか。
腹がよじれるほど笑う月島くん……いかん、見てみたい。
「月島くんの表情を発掘しよう作戦」を頭の中で練っていると、不意に
「出席番号8番!」
と呼ばれた。
弾かれるように顔を上げて黒板に書かれた日付を見ると、私の番号と同じ。
ああ、前もって準備しておけばよかった!
「ここに入る単語を答えろ」
チョークで示された場所には長文の空欄があって、私は慌てて全文の意味を考え始める。
……月島くんをじっと見ていたから、先生の話ちゃんときいてなかった。
「わからんのか?ったく、授業を聞いておけ!」
すみません、と謝って腰を降ろそうとすると、隣の月島くんがぼそっと何かを呟いた。
うまく聞き取れず、顔を彼の方に向ける。
すると月島くんは形のよい唇を動かして、「if」と言った。
どういう意味かわからず首を傾げること数秒。
ようやく理解が追い付いた時、私は思わず先生に向かって「いっ、if!」と言ってしまっていた。
次の人を指そうとしていた先生は面食らったように目を見開いて、
「お、おお」
とうなずいて空欄を埋める。
バッと月島くんに振り返って笑顔を見せると、彼はちょっと驚いたような顔をしてから―――ふわりと微笑んだ。
「!!」
レアだ!レアな月島くんだ!
今まで見たことがない表情をした月島くんは次の瞬間にはいつもの無表情に戻ったけど、違う一面が見れた私は満足だった。
とりあえず、くすぐる前にお礼を言おう。
月島くんについて知ってること。
・意外と優しい
・笑ったら天使
↑new!
※月島くんって天使スマイルだよねって言ったら、信じられないくらいの蔑みの視線を頂きました。
※まあ新しい表情が見れたって事で。
[ back ]