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「月島が照れる所を見たことあるか?」


放課後練習が始まる前、コーチに呼ばれた月島の後ろ姿を見ながら、主将は唐突にそう問いかけた。柔軟体操をしていたそれ以外の部員たちは数秒の逡巡の後、同時に首を横に振る。その反応をみた澤村は大きく頷き、重々しい口調で言った。


「月島が照れる所を見たくはないか?」


皆の目線がすっと月島の背中に行き、それから各々頬を赤くし照れる彼の姿を想像する。いつだって冷静沈着、顔色を変えるどころかまともに笑った顔さえ見たことがない月島の照れた表情なんて、レア中のレアだ。
意地の悪い笑顔を浮かべた月島を除く烏野高校バレー部のメンバーは、寸分違わぬタイミングで深く首肯した。












ケイクオンザストロベリー












挑戦者1:日向翔陽

「おっ、おれ行きます!」


開脚をしたまま手を上げ立候補した日向に、皆の目が向いた。話し合いの結果代表者が次々に月島を辱しめる事になり、赤面させた者の勝ちというルールになった。
影山や東峰、澤村、縁下辺りが見学組で、西谷と田中は目を爛々と輝かせ自分の番を待っている。

言い出しっぺの澤村が参加しないのはいささか疑問が残るが、この人はけしかける側の人間なのだろうと影山は納得した。それよりも妙に爽やかな笑みをたたえる菅原の方が、何をするのか予想がつかず怖い。


「がんばれー、日向」

「いったれ翔陽!月島に恥かかせてやれ!」


先輩からの声援を受け、日向が恐る恐る立ち上がった。これは俗に言ういじめというやつではないかと思ったが、全員がスルーする。
何にそんなに緊張しているのか、手と足を一緒に出して歩く日向を見て、影山は小さく息を吐いた。月島がこちらを向いていないことを確認してから、そろそろと腕を伸ばす。目的は月島の鞄らしい。

部活に来てすぐ呼ばれた月島は、まだ鞄を部室に置いてきていなかった。何をするつもりなのかと好奇の視線を集める日向は、そのファスナーをそっと開けていく。


「……さー始まりました、第一回『月島赤面選手権』。司会を務めさせていく、副主将の菅原です」

「実況は西谷でお送りします!」


手をマイクのように握って口許に近付ける二人は、かなりノリノリだ。
日向が戦地へ赴く前に言っていた作戦を頭に浮かべ、影山は柔軟を続ける。『おれがされたら恥ずかしいことをする』、その作戦は吉と出るか凶と出るかだ。


「翔陽が、月島の鞄から何やらファイルを取り出しました!」

「あれは……テストかな」

「二つ折りの紙を抜き、高く掲げる翔陽!それをどうする気か!?」


確かに、他人にテストの点数を見られていい気分の人間はいないだろう。加えて昨日月島が「今回はあまり良くなかった」と小さくぼやいていたのを思い出した。あの月島がそんなことをいうなんて、よっぽど酷かったらしい、と影山も驚いたのだ。

日向にしては頭を使ったな。
影山が感心して頷いた次の瞬間、日向の手の中で折られていたテスト用紙が開かれた。


「つ、月島の英語の点数は、はちじゅ……っ?!」


高らかに読み上げ始めた日向の言葉が止まる。持った答案と影山たちを交互に見て口をポカンと開ける日向は、困惑した様子で「え?え?」としきりに慌てていた。


「………ちょっと、何してんの」

「ヒィッ」


いつの間にか背後に回った月島に見下ろされ、恐怖に縮こまる日向を皆真剣な顔で見守る。いつになく不機嫌な月島は自身の答案用紙の存在に気がつくと、何も言わずにそれを取り返した。
恥ずかしがれ月島!若干前のめりで念じるギャラリーに気を配る余裕もないらしく、日向はただただおろおろとしている。


「おまっ、お前、あんま点数良くなかったって、」

「ハァ?よくないよ、だから見せたくないんだって」


ったく、恥ずかしい。
溜め息混じりに吐かれた言葉にメンバーの期待が寄せられる、も。


「………赤面ならず、か…」


忌々しげな声が誰からともなく漏れ、肩を落とした。残念ながらルール上、顔を赤くさせなければ無効である。
菅原が「戻ってこーい」と声をかけようとした時、日向はひどく混乱したまま固まった。その口は「80点?え、80点で悪いの?」と小刻みに震えており、呆れた月島が離れても尚膝が笑っている。


「………西谷、田中」

「「うス」」


澤村が静かに二人の名前を呼び、救出部隊が日向の確認に向かった。各人神妙な面持ちでその様子を眺め、心の中でアーメンと囁く。影山は他の皆に合わせて胸の前で十字を切った。

口から魂の抜けている日向の肩を田中が掴み前後に揺らすも応答はなし。西谷が頬を軽く叩くも反応はなし。二人に引きずられるようにして帰ってきた日向は虚ろな目ではちじゅってんを繰り返していて、菅原は静かに目を閉じ宣言した。


「挑戦者日向翔陽、再起不能により失格!!」


メンバー達に黙祷されながら、日向は依然として虚空を見つめ続けていた。





挑戦者2:山口忠

「よし行け山口!幼馴染みの本気見せたれ!」

「えっ?!俺ですか……」


どんと背中を押され自身無さげに飛び出した山口は、首を傾げながら輪から離れる。月島とは結構距離を取った位置で振り返った山口に「チキんなー、男だろ」と非情な声がかけられ、影山は素直に可哀想だと思った。


「さあて山口選手、何やら考え込んでるようです!スガさん、何をしているんだと思いますか?」

「んー、昔の恥ずかしい思い出とかを思い出してるんじゃないかな」

「なるほど!ずっと一緒にいたからこその技っすね!!」


覚悟を決めたかのように、山口の顔が上がる。それからゆっくりと影山たちギャラリーの方へと体を向け、険しい表情のまま深く頷いた。
いつにない山口の本気度に、皆の緊張もピークを迎える。誰かがゴクリと唾を飲み込み、それと呼応するかのごとく山口は目を瞑って声を出した。


「ツッ、ツッキーの恥ずかしい秘密その1!実は小学5年生まで雷が怖くて、本気でおへそ取られると思ってた!」

「「「「ブフォッ」」」」


山口のカミングアウトに、全員一斉に吹き出す。早くも気付いた月島が「山口……?」と呟いてゆらりと近寄ってくるも、勇者は屈せず挑戦を続けた。


「その2!中1のとき遊園地で、具合悪いからって一人だけお化け屋敷に入らなかった!」

「山口いい加減に、」

「そそその3!ツッキーは4年生のときおねしょしておばさんに怒られてた!」

「山口」


つかつかつかと背後に忍び寄った月島が、山口の後ろの襟を掴む。しかしそのままずるずると体育館の外に連れていかれる山口を見る余裕がないほど、一同は爆笑の渦に巻き込まれていた。
「あの月島がwwwおねしょwww」「お化け怖いとかwwww蛍ちゃんかわいwww」と体育館の床を転げ回りながら涙が出るほど笑い、落ち着いたところで司会の菅原がマイクを握り直す。


「えー、挑戦者山口、行方不明により失格!」


以来、山口の姿を見た者はいないと言う。





挑戦者3:田中・西谷ペア

「っシャア、俺たちの出番だな!」


マイクに見立てた手で握りこぶしを作り、西谷が勢いよく立ち上がった。その隣にいた田中も腰を上げ、ニヤリと悪どい笑みを浮かべる。


「龍、例のブツは?」

「バッチリだ。運が良かったな月島」


黒いビニール袋を掲げた田中は、西谷と目を見合せ自信ありげに頷いた。
こいつらなら何かをやってくれそうだという期待とこいつらなら何をやらかすかわからないという不安が入り交じり、観客組はごくりと喉を鳴らす。袋の中身は依然として不明であり、一体何なのかと注目が集まった。
山口を連れてどこかに行っていた月島が、山口を連れずに戻ってきた。それから親の仇でも見るような眼差しで影山らの方を見る。その瞳は「ふざけんじゃねえぞ」と明らかな殺意に満ちており、ようやく落ち着き始めていた日向がブルブルと震えたした。よほどのトラウマらしい。

あれだけ睨み付けている月島に向かっていくだろうかと、影山は2年生二人を見やった。しかしむしろ爛々とした目の輝きは増すばかりであり、とばっちりだけは食らいたくないなと他人事のように考える。


「……さあ、田中・西谷ペアがゆっくりと近付いていきます」


二人の動きに合わせて菅原の実況が飛び、そろそろと歩く背中を見つめた。月島は手を洗いに行ったようで(何故洗う羽目になったのかは山口の身の安全に関わりそうなので考えないでおこう)、足早にブツとやらを持っていく。

中身は何だろうか、と影山は考えた。
月島にとって恥ずかしいものだから、卒業アルバムか何かか。いや、月島がそんなものに赤面するとも思えない。ということは日記、とか。
そんなゆるい予想を立てていた影山の目の前で、まず西谷が足を止めた。先ほど日向が触った月島の鞄を掴み、次に田中が持っている袋に手を突っ込む。


「おおーっと田中選手、ここで袋の中が披露されます!」


菅原の声にも熱が入り、皆が田中の手に注視した。得意気な顔がちらりと振り返って、見せびらかすようにブツを出す。


「さあ、中身は……………」


バッと出されたのは雑誌のようだった。表紙はやけに派手な色使いで、どうやら肌色の面積が多く思える。
あれは何かと影山が目を細めた先で、田中はそれを無造作に月島の鞄の上に置いた。それから意地の悪い笑顔のまま元の場所に戻ってくる。

遠目ではやはり判断できなかったのか、してやったりと笑う二人に菅原が首を傾げながら尋ねた。


「………田中、アレは一体何だ?」

「まあ今に見ててくださいよスガさん、月島のヤローを絶対赤面させて見せます!」


やけに自信満々な言葉を聞いた直後、体育館の中に月島が入ってきた。手を洗い終えたらしい。訝しげな目線を影山たちから外そうとはせずに、ハンカチを取ろうと自身の鞄に向かう。

そして、固まった。


「「よっしゃ!」」


まるで罠にかかったとばかりに、西谷と田中が強くガッツポーズする。完全にフリーズした月島はやがてぎこちなく動くと、ゆっくりと鞄に近付いた。何か汚い物を見るかのように半身で雑誌を眺めている。それから、親指と人差し指で鞄の上のそれを摘まんだ。


「……月島選手、鬼のような形相でこちらに向かって来ます」


目に暗い影を宿した月島が、早足で近付いてくる。面倒な空気を察した影山が退散しようとすれば、唇をわなわなと震わす日向に裾を掴まれた。
渋々止まった影山は月島に視線を投げ、その手元の雑誌を見て愕然とする。思わず目を逸らした時、いつの間にかすぐ近くに来ていた月島の低い声が聞こえた。


「……………これ、何ですか」

「俺の秘蔵本だ」


田中の言葉を最後まで聞く前に、スパァンと雑誌が床に叩き付けられる音が響く。「テメェ月島何してくれてんだ!」という田中の声も意に介さず、月島の恐ろしい程に冷静な瞳がギャラリーを見た。

投げ捨てられた雑誌はいわゆるエロ本という物で、表には堂々とほぼ裸に等しい格好をした女が載っている。つけられた見出しは『イケない女教師特集』、言うまでもなく年齢指定されている本だ。
しかし月島は赤面するどころか嫌悪をむき出しにし、信じられないような冷たい目で2年の二人を見る。そして地に響くような低い声で「二度とこういうのやめてください」と呟いた。本格的な怒りに、田中と西谷が顔を見合わす。


「……えー、赤面しなかったため、田中・西谷ペアは失敗!」

「それからこの雑誌は没収な。学校にエロ本持ってくるな」


少しばかり戸惑う菅原、放られた雑誌を拾う澤村。田中の宝もあえなく敗れ、皆は月島の赤面顔を見ることを諦め始めていた。
さてそろそろ部活始めるか、と溜め息を吐いた澤村が立ち、それに倣って影山も曲げていた膝を伸ばす。しかしそんな部活ムードをぶち壊したのは、にこにこと不穏な笑顔を残している菅原だった。


「よーし、じゃあ次は俺の番だな!」


影山は珍しく、自身の嫌な勘が当たるような気がした。






「………スガ、言い始めた俺が言うのも何だけどさ、もうやめないか?」

「えー、もう助っ人呼んじゃったよ」

「助っ人?」


意外な言葉に視線が集まり、菅原が深く頷く。何でも澤村の提案を聞いてすぐに『助っ人』とやらに連絡していたらしいから、この人はほんとにイタズラが好きなんだろうと影山は思った。
その助っ人というのは、と澤村が追及しようとしたそのとき、体育館のドアが開いて聞き覚えのある声が響いた。


「こんにちはー、菅原先輩に呼ばれて来たんですけど……っと」


一斉に自分に向けられた目に、声の主は困惑気味に体を引いた。しかしすぐに状況に順応し、ふっと微笑み「及川葵です」と名乗る。影山はいまいち現状を理解できずにぱちぱちと瞬きをして、体育館に入ってきた葵に声をかけた。


「…お前、なんでここに居るんだよ」

「あ、飛雄ちゃん。だから、菅原先輩にメールで呼び出されたんだってば」


ほら、と胸のポケットから携帯を取り出した葵はメールの画面を表示し影山に向ける。そこには確かに体育館に来てという旨の内容と、差出人に菅原の名前があった。
「お邪魔しまーす」と律儀にも挨拶をして入ってきた葵に、またしても全員の視線が集まる。何となく予想がついていた影山と指示をした菅原以外は、その格好に目を見開いた。


「いやー、やっぱり葵ちゃん似合うね」

「ありがとうございます菅原先輩」


それもそのはず、葵の身に付けていたのは学校指定の制服ではなく―――きらびやかな王子の衣装だったのだから。
部活の途中で抜け出して来たのか、はたまたこの為だけに着てきたのか。とにかく細かい刺繍の施された白い派手な衣装(ご丁寧にクラバットも着いている)を着た葵は、それがさも当然といった表情で依頼主である菅原に近付いた。
そして事の顛末とルールの説明を聞いて、指でOKサインを作った。





挑戦者4:及川葵

「まあ要するに、月島くんの顔を赤くさせればいいわけですよね」

「そういうこと。葵ちゃん期待してるからね〜」

「任せてください。この男葵、菅原先輩の命とあらば例え火の中水の中!」

「お前自分の性別も忘れたのか」

「やだなあ飛雄ちゃん、こういうのは気分なんだから」


いざ尋常に、参る。
頭の天辺から爪先まで異国の王子の風貌である葵は真剣な声でそう言い、そしてゆっくりと歩き始めた。その先に見据えるのは言わずもがな月島で、警戒した様子だった彼も突然現れた部外者に驚いている。
葵の足取りはあくまで軽かった。かと言って浮わついているのではなく、優雅な、それでいて気品に満ち溢れた足運びである。少々大袈裟な物言いをするならば彼女―――今は彼かも知れないが―――の足元には赤い絨毯が見えるようだった。こいつの演技は既に始まっているんだな、と影山は一人考える。


「…………ご機嫌麗しゅう、美しいお嬢さん」


実に自然な口調で張られた声に、固唾を飲んで見守っていた部員達が吹いた。不意打ちをくらった影山も同様、菅原に至っては早くも涙目になるほど笑い転げている。
まさかこいつは、190近い男を『お嬢さん』として扱うつもりなのだろうか。


「ちょっと、いきなり誰ですか」

「今日はなんて素晴らしい日なんだろう、君のような可憐な女性に出会えるなんて!空をご覧、この眩しいスカイブルーも僕たちの運命を祝福してくれているようだ。ああほら、ひばりもお祝いの鳴き声を上げているね」


当たり前だがここは体育館の中であり、ひばりはおろか空など欠片も見えない。


「すみません、意味が」

「名前は何て言うんだい?……ローズ?いい名前だ!深紅の唇はまさに薔薇の花。透き通るような白い肌に咲く一輪の華なんて、ローズ、名は体を表すというけれど、君はその名に相応しい美しさだ……」


流暢な日本語は月島に口を挟む隙を与えなかった。立て板に水とばかりに捲し立てられる称賛の言葉はよくもまあ、とギャラリーを唸らせるには十分で、普段から葵を見ている影山以外は呆気に取られているか爆笑しているかのどちらかである。


「ねえ王様、これ王様の所のクラスメイトでしょ?!何とかしてよ!」

「王?僕の父の事を心配してくれているんだね。確かに父は、いや王は少しばかり気難しい所があるけど、君みたいな美しくて思慮深い女性ならば喜んで結婚を認めてくれるよ。だからローズは何も案じず、ただ身を任してくれればいい」

「王様聞こえないふりしないでよ!」

「無理だ、俺には止めらんねえ」

「ああローズ、僕の可愛いローズ……もしも許されるのならば君をこの腕に抱き締めてどこかに連れ去ってしまいたい…君のこの折れそうに細い腰を抱き寄せ、金糸のような髪の毛をすき、真っ赤な唇に口付けたい………」


自分より遥かに背丈の高い男の腰に手を回し『折れそうに細い』というのはいささか無理があった。しかしながら葵の芝居はそんな身長差などものともせず、影山たちは一瞬ドレス姿の月島を想像してしまう。まあそれでも吹き出してしまうのだが。


「どうして顔を隠すんだい、ローズ。恥ずかしがる事はないよ。もっとも、そんな君も愛しているけどね……」


耳が溶け落ちてしまいそうなほどに甘ったるい台詞は、相変わらず聞いているこちらが恥ずかしくなってくる。
体育館があっという間に異様な空気になった所で、菅原がすっと立ち上がった。葵は大健闘したが、このまま続けていても赤面には至らないだろう。


「王子ー、どこにいらっしゃるのですかー?」


従者のように呼んだ菅原の言葉から、葵は素早く意味を捕らえた。ギャラリーの方をサッと見てからすぐに月島を見て、その手の甲にキスをする。


「残念だが時間が来てしまったようだ。ローズ、君とまた会えると信じているよ。次は君によく似合う紅い薔薇をたくさん用意するから、楽しみにしていてくれ……」


最後の最後までキャラを崩さなかった葵は、ただ唖然とする月島に背を向け颯爽と歩き去っていった。





「お疲れ葵ちゃん、おもしろかった!」

「悔しいなあ、すみません菅原先輩」

「いやいや、楽しいもの見れたから結果オーライ!」


がくりと肩を落として帰ってきた葵に、皆口々に労いの言葉をかける。赤面こそさせることが出来なかったものの、今日一番笑わせてくれたのはお前だ、という意味も込めて。


「しっかし、月島ほんとに照れなかったな」

「大地があんなこと言ったからここまで大事になったんだからね?」

「こりゃいよいよノヤっさんの『月島実はアンドロイド説』も濃厚だな…」

「ああ……あり得ない話じゃねえだろ」

「飛雄ちゃん、ちなみにこれはイジメなの?」

「さあ、俺は知らん」


そっかと笑った葵はじゃあ失礼しますと踵を返し、しかし振り向いて何かを思い出したように「あ」と声を上げた。



「ローズ…じゃなくて月島くん、少し遠くのケーキ屋さんで苺のホールケーキを嬉しそうに買ってるの見ましたよ。こっそり持って帰ってたところを見ると、隠れ甘党なんですか?」

「「「「「「「甘党?」」」」」」」



―――――詰め寄られた月島が顔を赤くして必死に弁明するのは、数分後のことだった。





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鈴木様、リクエストありがとうございました。

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