番外編4


「おっきくなったらおよめさんにするね」
「?うん、いいよ」

時に紅葉に例えられるような小さな手が、一回り小さな手を取った。見つめ合う二人は小さな恋人のようで、周りの大人たちは微笑ましく見守っている。
ただ一人を除いて。

「あかんあかん!なに言うてんねん!」

ベリッ!!と聞こえそうな勢いで修吾が男の子から引きはがすように娘を抱き上げる。
恐ろしい物を見るような目で男の子を見た後、彼の後ろに立つ父親に向かって声を荒げた。

「お前んところの息子にうちの子はやらん!」
「子供の言うことにそんな本気になるなよ」

おかしそうに笑いながら言う昼神さんは、余裕たっぷりの様子で息子さんの頭を撫でている。この落ち着き修吾にも見習ってほしい。年が近いからか、試合会場で顔を合わせる親しみからか、昼神家の息子さんと我が明暗家の娘は最近仲が良かった。いったい何に影響を受けたのかプロポーズまがいのことを言いだした時は少し驚いたものの、可愛らしい絵面に微笑んでしまう。

だけども、修吾にとっては昼神家の息子さんは脅威らしく、帰宅してもなお「油断ならん奴やねん…父親とおんなじや」とぶつくさ言っていた。昼神さんと何かあったのかな。いや、シンプルに今期負け越してるから悔しいのかもしれない。

「俺たちの娘が取られてまう… 名前…」

ほぼしがみつく勢いで抱き着いてくる修吾をよしよしとあやしながら、これは本当に娘が結婚するとき大変かもしれないと、少し心配に思ってしまった。

「なんでパパが赤ちゃんなんや!」

修吾が不満の声 を上げたのは、プロポーズ事件からそう時間の経っていない土曜日のことだった。
BJとは別のチームとの試合の為大阪にやってきた昼神さんの試合が終わるまで、息子さんをお預かりすることになったのだ。奥さん抜きでついてくるなんて珍しいと思ったが、なんでも「娘ちゃんに会いたい」と言ってくれていたらしい。可愛い。

意外なことにOKを出したのは修吾の方で、私には事後報告だった。二人は再会を喜び合いすぐに遊び始める。そしてその内おままごとを始めた。
そこまでは良かったのだ

「娘ちゃんがママで、息子くんがパパ、パパはあかちゃんね」
「なんでやねん!」

配役が娘から発表された途端、不満の声を上げる修吾。だけどすぐに「あかちゃんはおはなしできないんだよ」と注意される。

「…ばぶ」

どこか悔しそうに繰り出された「ばぶ」に吹き出しそうになった。でも笑ったら修吾が傷ついてしまう。声を出さないように大笑いするのは至難の業だった。

修吾はそのまま 「ばぶ」だけで感情表現することを強いられ続け、(いくらちゃんを思い出してしまった)たまにぴったりとくっつく二人の間に「ばぶ!」と割り込んでいた。
しばらくしてお迎えに来た昼神さんも、私と一緒になってその様子にサイレント爆笑していた。
笑っている私たちに気がついた修吾はそれはもう凹んでしまい、「もういやや…」と落ち込む約2mの赤ちゃんを私はよしよし、大好きだよと慰め続けることに
なったのだった。

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