Funny


「ハロウィンパーティ?数ヶ月後にはクリスマパーティもやるのに?うはぁめんどくさぁ」


と廊下で一人喋っている私は、はたから見たらなんて思われてるのだろうか。
まあなんて思われていたってどうでもいい。今はそれよりも、この掲示板に貼ってある「ハロウィンパーティのお知らせ」がしんどい。


「参加自由だけどダンス次第では出来の悪い教科に加点するって?」


出来の悪い教科……魔法史……うっ、頭が……。
魔法史以外は優、良なのにも関わらず、魔法史は可、酷ければ不可。
ダンス次第では不可や可が免れるということか。
しかしダンス……相手……うっ、頭が……。
頭痛が痛いと言っても過言じゃない。


「唸ってますね、ハルカ先輩」

「ブラック弟」

「……その呼び方どうにかなりませんか?」

「あ、ごめん。つい。レギュラスもパーティ参加するの?」

「そうですね、成績にプラスになるようですし」

「やっぱりそうだよねぇ」


ブラック兄弟は引く手数多だから、私のように頭が痛いを通り越して頭痛が痛いなんてことにはならないだろうな。


「パートナー、どうするんですか?」

「リアルタイムで今それ考えてたところ」

「エイブリー先輩やマルシベール先輩は……」

「えー、無理無理。参加しない方がまし」

「……じゃあ、この前約束をすっぽかされたので。僕と踊っていただけませんか?」


私は今とんでもない顔をしていると思う。
とんでもない顔でレギュラスを見ていると思う。
……いや、だって。まさか、だって。
え、私レギュラスにパーティ誘われてる?


「すごい間抜け面ですね。返事はいつでも大丈夫なので、考えておいて下さい」


そう言って優しく笑えば、スタスタと寮への道を歩いていく。
……?
もしかして私その気になれば友達作り放題なのでは?
はー、と息を吐いて、さてどうしたものか。
取り敢えず図書館にでも行くかとレギュラスとは逆の道へ足を向ける。
少し歩き、曲がり角を曲がろうとした刹那。


「ぷぎゅ」


人にぶつかった私は、スライムが潰されるかのような声が出た。そして間髪を入れず腕をグイッと引っ張られた。
鼻がじんじんする。無い鼻が更に無くなったらコイツ……コイツらのせいだ。

さて。
私は今二人の男に両腕を引っ張られてる。痛い痛いもげるもげる。
なんて冗談も程々にして。
この二人の後ろ姿には、それはもう嫌というほど見覚えがあった。


「マルシベール、エイブリー。離してよ」


さっきまで噂……という程のことはしていないが、話に出ていたマルシベールとエイブリー殿だ。
やれやれ、うんともすんとも言わないぜ。困った奴らだ。
まあ極力関わりたくはないが、この後特に用事もないので、今日くらい付き合ってやるか。
……というか、付き合わないと最悪死ぬ。もちろん私が。


「わっ」


足の大層長い二人に置いていかれないよう、必死に足をフル回転させながらどこに行くのだろうと考えていると、空き教室にポイッと放り投げられた。
少し身体が宙に浮いた。この二人のどこにそんな力があったというのか。
ゴリラかな?
……なんて冗談はそろそろいい加減に程々にして。
エイブリーが教室の扉に鍵をかけた。アロホモーラで一発じゃね?って思うけど、アロホモーラを無効にする呪文もあるんだっけ。
私は知らないけど。


「ねえ、ハルカ」

「……はい?」

「僕達、友達だよね?」


そう聞いてくるマルシベールの声の低いこと低いこと。
こりゃ完全に怒ってますわ。理由は人は何故生きるのか並に謎ですけど。
答えを間違えれば死の呪文でも飛んできそうだ。現に整った顔を歪め……たところでイケメンはイケメンなんだが、そんな顔のエイブリーが杖をこちらに向けている。


「……なんじゃない?」

「ブラックとは?……弟の方ね」

「友達、というか……先輩後輩?」

「じゃあ、ブラックよりも友達である僕らの頼みを優先するよね?」


なんて?
と聞き返すところだった。危ない危ない。
エイブリーもだが、彼以上にマルシベールは話がふわふわと跳躍していて難しい。


「頼み、って?」

「ハロウィンパーティの日。俺達の部屋に来い」

「なんて??」


おっと……聞き返してしまった。
さっきマルシベールのがふわふわしていると言ったが……あれは嘘だ。マルシベールもエイブリーもふわふわを通り越してもはやおかしい。
おかしい。


「いやぁ……でもやっぱ人として最初に約束した方を優先させるべ」

「まだ約束してないだろう?」

「なんで知ってるんですかね」


こりゃ驚いた。
もう私は「はい」か「イエス」かしか答えが残ってないじゃないか。


「でも、まさか二人の部屋でパーティするってわけでもないでしょ?私はパーティ出たいし」

「何故だ?」

「成績上がるから」

「それが理由か?」

「うん、まあ」

「なら俺達ツルノの苦手な教科を教える。間違いなく成績は上がるだろ」


こりゃ驚いた。
話が通じねえというか会話のドッチボールというか。


「……待って。根本的に、二人の部屋で何すんの?」

「何って、ハロウィンパーティだよ?」

「なんでや。三人でやるより皆でワイワイ楽しくやるもんでしょパーティって」

「そう?少人数のパーティも悪くないよ?」

「……じゃあ逆に聞くけど。何で三人だけでパーティやりたいわけ?」

「仮にお前が誰かと踊るとすれば、お前のドレス姿を間近で見る奴がいる。そもそもドレス姿を不特定多数に見られることになる。それだけでも奴らの目を潰してやりてぇのに、ブラックと踊るのだけは許せない。それならいっそ、パーティに出さず俺達三人でパーティをやればいいのではないか。……というわけだ」


……?
何が「というわけだ」なんだろう?
私の理解力が悪いのか?
全く、これっぽっちも理解出来なかったうえに話が支離滅裂すぎる。
兎にも角にも理解出来なかった。


「あー……と……え、なに、二人は私が好きなの?」

「嗚呼」

「だってハルカは」

「「友達だから」」


くらりと、目眩がした。
私の人生の中で、ここまでコミュニケーションをとりたくないと思えるのは、後にも先にもコイツらだけだろう。



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