Funny
湖は最高のうたた寝スポットである。
それに気付いた私は、週に4、5回は湖に通うようにしていた。
朝方の湖は、いつも以上に空気が澄んでいる。遮るものがない柔らかな朝日を浴びながら二度寝をするのは最高だ。
昼の湖は、ピクニック気分を味わえる。そよ風に運ばれる緑の香り。昼食を少し拝借して湖で食べ、その後ふわふわの草に包まれながら昼寝をするのは最高だ。
夜の湖は、星がよく見える。少し肌寒いので、ブランケットは必須だ。水面に映る星と、空にあまねく星は、どこぞの塩湖にいるような錯覚に陥る。しかし、寝てしまうと就寝時間が過ぎて漏れなく罰則を受けてしまう。風邪もセットでついてくる。
そんな早朝の湖に、珍しく先客がいた。
「傷だらけのルーピン」
昨日よりも傷が増えて、いつもよりもげっそりして、顔色が悪いルーピンがいた。
面識はあまりないけど、エイブリーとマルシベールと話すようになる前は、ポッター経由でたまに話をしていた。
「……ツルノ。おはよう」
「おはよう。こんな朝早くに珍しいね」
「ああ……昨日は、ちょっと。眠れなくて」
「あー、私も。昨日の満月凄い明るくなかった?地下まで光が届いてたような気がする……」
満月。その言葉にぴくりと反応するも、すぐに苦笑して「そうだね」と返ってきた。
ルーピンは人狼なの?
その言葉を私はぐっと飲み込んだ。
けどそれを確認したところでどうにもならないし、たぶんルーピンの心のケアをできるほどの立場じゃない。
それはポッターたちの役割だ。
「ふあぁ……眠い。私は二度寝するけど、ルーピンは?」
「え、僕は……」
「寝るとすっきりするかもよ。ほら」
ごろんと横になり、私は右側のスペースをぼふぼふと叩いた。私の手跡がついた。この草は低反発並みである。
ルーピンは困惑しているようだったけど、やはり眠いらしく、大人しく私の隣に来てごろんと寝転がった。
「……いいの?」
「何が?」
「同じ寮の人たちから何か言われない?」
「誰も見てないでしょ」
「……」
くん、と。ルーピンの鼻が動いた。
「そう、だね」
「……誰かに見られてたとしても、私の行動に何か言われる筋合いはないからね。私は今ルーピンと二度寝をしたい。ただそれだけ」
「……ツルノ、きみやっぱ変わってる」
「知ってる」
ふふ、と笑い合うこの時間がなんて平和なことか。
私は不自然にガサッと動いた後ろの木に気付かないふりをしながら、そっと目を閉じた。
肌寒くなってきた。
ハロウィンまでもう少し。
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