俯せで腰だけ上げてみっともなく下半身を晒す。フツーに生きる健全男子のやることじゃねえだろとは思いながらも、従順な俺はシーツに爪を立てながらそれを実行する。覆い被さるように圧し掛かる今吉さんの体重になにかを思い知らされる気がして俺の背骨のところがゾワッとした。薄暗い部屋で、何やってんだろう、俺。「   」。浅く息を吐いていると、今吉さんの声が耳元で響いた。俺の名前。この人に呼ばれるとそれだけでもうダメになる。

「何やねんその反応。処女か」

茶化す様に一言。は?と思って肩越しに振り向くと、至近距離で今吉さんがにやにや笑っていた。キスでも出来そうな距離に混乱してとりあえず誰がじゃと口を開こうとした瞬間、何かで存分にぬめった生温い指がグ、と尻の孔に押し込まれて思わず背中が仰け反った。

「ひ、んん…ッ!」

振り向いていた顔をシーツに埋めて、その感覚の気持ち悪さに必死で耐える。恥ずかしい事に初めてじゃない。ローションだかゼリーだか知らないが十分に濡らされたからってあっさり指が入るような場所じゃないんだ、ここは。そう考えると虚しくなる。俺なにやってんの。女子のおっぱいと生足にキュンキュンしてた健全な男子高校生が、何をどう間違えたらケツの穴に男の指入れられてあんあん言わされなきゃならねーんだ。しかも相手はこの桐皇のバスケ部主将で、表向き超優秀なあの今吉翔一と来た。女子が黙ってねーぞ。いや、うん、まあ、そンなこた知ったこっちゃねえがよ。

「いま、よし、さ…っ」
「何や、物足りひんか?」
「や、ちがっ…あ、!!」

そもそも何で俺と今吉さんがこんなことになってんだよ。回想も許してくれないこの人は笑いながら掻き回す指を二本に増やした。節くれ立ったその指の関節がごりごりと孔を抉り、そのずっと向こうのやわいとこまで容赦なく荒しまくる。しかもそのやわいとこにまためっちゃいいとこがあって、今吉さんの指がそこをぐいぐい押し潰してくるから俺は耐えきれずに泣きそうになりながら女みたいな声を出していた。

「ひ、っ…!そこ、ッあ」
「え?ここ?」
「あ、あっ…もっと、下の、んッ、…」
「んー?せやから何処やねん。ちゃんと言うてくれんと分らんわ」
「あ、やぁ…いまよしさ、……あぅ、う…」
「……エッロ」

なんかもうこうなると俺は完全に快感に服従してて(断じて今吉さんに服従してるわけじゃない)、すげえ貪欲に気持ち良いことを求めてしまう。潤滑剤のせいで指が抜き差しされるたびにぬちょぬちょ鳴るのがすげえ卑猥で、しかもそれを自分が立ててるとは思えなくて、遠いとこでAVの音声だけ聴かされてる気分だ。ぶっちゃけめっちゃエロくて気分も最高にノってくるから困る。俺は背中にずしっとかかった体重にさえ感じながら腰を震わせた。抜き差しも掻き混ぜるのも止まらない。だけどこの人は焦らされている俺の反応を愉しむためにいいとこには触れてこない。いや正確には触れてはくるんだけど、ちょっと掠めたり、感覚に慣れだした頃にがりっと引っ掻いたりするだけ。そのたびに俺は期待して落とされて期待して落とされて、そんでだらだら汗を掻いて先走りもぐっちょぐちょで、みっともない四つん這いのまま(このクソ眼鏡が!)、と思うことしか出来ないのだ。

「今吉さ、ん…いまよしさ…」

耐えかねた俺はついに今吉さんを呼んだ。べっちょりとよだれのついたシーツから顔を上げ、振り返る。べたべたのくちびるとしっとりと濡れた目で、俺を見下ろす今吉さんに精一杯の甘い声を出した。涼しそうな顔しやがってこのクソ眼鏡。

「おれ、もぉ、イきたい…」

これに弱いんだこの人は。惚れた弱みに付け込んでやる。

「お前…それはアカンわ」

どや顔しそうになるのをなんとか抑えて俺は今吉さんをじっと見つめた。俺に被せていた体を起こしながらさっきまで掻きまわしていた指を引き抜かれ、その感覚にすらビクンと体が反応する。息を整えようとしたとき、「う、わっ!」乱暴に腕を掴まれ、ぐるりと視界が反転する。当然のように俺の両足の間に今吉さんが居て、バキバキに勃起して先走りだらだらな俺のチンコが見えて、さらにそのちょっと奥で今吉さんのが、ウワすげえ勃ってる…っていや、ていうかどうしてこうなった。

「粗方"これに弱い"だの"惚れた弱みに付け込んでやろう"だの考えたんやろうけど」
「え」
「甘いわドアホ。ワシを誰や思てんねん」

ですよねー読まれてますよねー。
愛想笑いをしてる間に今吉さんが俺の片足を掴み、そのひざの裏をぐいっと押し込んだ。割り開かれた足の間で、孔がヒヤッとした外気に触れてすぐ、指とは比べものにならないほど太くてアツい物がそこを容赦なく貫いた。

「ぁが、はッ…!!!」
「きっつ、もうそろそろ慣れてもええやろ…何回目や」
「ひぃ、い、しらな、おぼえてな…あぐ、ぁ、あアッ!」
「…まあ、片手じゃ足りんかもなぁ」

ふう、と詰めた息を吐きながら今吉さんがそう呟いて、早速抽挿を始めた。まだ腹の中はその太い異物に驚いて引き攣れてしまって結構痛いから俺はせめてナカが馴染むまで待ってほしくて、まって、まって、って息も絶え絶えに言うのに、それがどうやらこの人をバツグンに煽らせるらしくて容赦なくガツガツと腰を穿たれる。

「ひや、やっ、アっ!」
「ホンマお前は毎度毎度…エエ声で鳴いてくれるからかなんわ」
「ん、んぅ、あン、ッあ、あ!!」

興奮してるのか、掠れていつもより色っぽい声で囁かれると力が抜ける。されるがまま揺らされて、さっきまで痛かったナカはぶち込まれている異物に慣れてもう完全に快感しか連れてこない。あんまりにも気持ち良すぎて吐きそうになり、女同然の喘ぎ声がひっきりなしに次から次へと出てきて止まらなくなった。「いまよしさ、いまよしさ、!ぁ、んあっ!」縋るように呼んで手を伸ばす、抱き締めてほしくて。だけどそんな浮かれた甘ったるい考えは跳ねのけられ、今吉さんは俺の手首を掴むとそのままバシッとシーツに押し付けた。そしてさっきまでの激しい抽挿はどこへやら、ゆるやかに腰を動かしながら今吉さんが俺を見下ろす。

「折角やし」
「…ん、え?」

「"翔一"って、言うてみ?」


濡れた睫毛が目の前で上下した。俺はぽかんとしたまま今吉さんを見上げて、固まる。や、何、言わせんの、このひと。まるで恋「まるで恋人同士みたいな、とかおもてんの」「読まないで、下さいよ…」ぎりっと睨み付けると今吉さんがニタァと嗤う。手首をシーツに留められたまま、ガンッ!と殴るように奥を突かれた。「あ゛ッ!」何度も。「あ、がっ!」何度も。その衝撃で頭の中が吹っ飛びそうになる。痙攣し始めた頃合いで今吉さんはぴたっと止めた。いつの間にかよだれが頬を伝っていた。

「なー、言うて。そしたらもっと気持ちよぉしたるから」
「あ、あ、…」

催促するように強く突かれて、抉られて、小休止。手首を掴んでいた今吉さんの指がよだれの伝った頬からくちびるを渡り、こじ開けるようにして口の中へ入ってきた。歯をなぞり、舌の縁を撫でて、溜まった唾液をくちゅ、と混ぜる。指フェラでも御所望かと舌を絡める前にずりゅっと指は抜けて行った。静けさ。さっきまでの言葉を繋げないほど強い衝撃が一過してひゅうひゅう息を溢しながら俺は覚悟を決める。


「しょ、いち……っ」


その声に、今吉さんがついに目を見開いた。
みるみるうちに顔が真っ赤になって、首まで真っ赤で、なに、その反応。初めて見た、すげえ、可愛いじゃん?

「あー、もうアカン無理」

ぼそりと呟かれてすぐにキス。思えば今日初だななんてぼんやりしながら、絡む舌にぞわぞわと背を撓らせた。吐き出す息さえ喰うようなキスで無意識にブツを締め付けて俺も今吉さんも完全に呼吸が乱れる。キスすると、まるで本当に恋人同士じゃねって思っちゃって男同士でこんなことしてんのもなんか全部赦されそうで堪らなくなった。絶対からかわれてる。遊ばれてるに決まってんのに。好きになるだけ無駄じゃねえか。って、

「…あんな、自分さっきから考えてること見え見えやで。…ワシら付きおうてるんと違うの?」
「ひぇ、?」
「えっ、ホンマに?えっ?」
「え、だって、今吉さん、俺の事、あそんでるだけ、じゃ」
「男相手にたかが遊びでここまで興奮せぇへんやろ…」

でも、とか、だって、とか口にするたび心臓が軋む。その先が言葉にならない。何を言いたいのかもわからない、とにかく俺は何かに対して言い訳したいんだろうと思う。

「じゃあワシは何て言うたらええの?好きやでってありきたりに言うたろか?まあ、それもお前とヤるたび何回でも言うてんねんけど…、」
「ひっぁ…」

穿たれて繋がったままのところをずるりと撫でられる。俺からは見ることなんざ不可能だが、そこは真っ赤に腫れて拡がって今吉さんのを浅ましく銜え込んでるんだろう。想像しただけでぞくりとした、俺もたいがい変態なのかもしれない。

「でもいっつもえらい気持ち良さそうに大きい声で喘いでるしやなあ…アタマぶっ飛んでて覚えてへんのかもな」

眇めた目が悪そうに弧を描く。ぶん殴ってやろうと上げた手をまたあっさり捕まえられてシーツにバシッ。今度は押さえつけたりせずに、それきり。さっきみたいに息を奪うキスをしたかと思ったら、尻の奥で馴染んでいた熱がまた動き始めた。呼吸まで今吉さんに管理されて身体だってもうひとつも言う事をきかない。俺が必死で今吉さんの首に腕を回すと、両足を押し開くようにまた膝の裏を抱えられて奥へ奥へと熱い塊が侵入しようとする。決壊したみたいにぼろぼろ涙が零れていった。

「…ぃち、…しょ、いち…ぃっ…!」
「……ここやったな、好きなとこ」
「!! うアあぁあッ!? やめ、いや、やらッ――!!」
「嫌やないやろ。それにさっき、もっと気持ちよぉしたるって言うたやんか」

分りやすいぐらい腫れ上がっているだろうそこを抉るように執拗に責められて息が出来ない。挿れるたびに亀頭が押し潰して、抽かれると出張った雁が引っ掻いていく。もう何しても気持ち良い、わけがわからない。何度目か押し潰され、引っ掻かれて、俺はがくがく震えながら射精した。ほぼ無意識だったがビュルッと勢いよく尿道から吐き出されるその刺激さえ強すぎて息が止まる。ぜえぜえと息をしながら震える腕でしがみつく。完全に泣いてしまった俺は鼻を啜りながら名前を呼んでいた。

「う…ぁう…ッ、しょ、いち…っ、しょ、ぃち…」
「…もう、アカンて、言うてるやろ」

辛いやろうけど堪忍な、切羽詰まった声がする。初めて聞いた、あまりにも余裕がない声だった。顔を覗こうとして腕の力を緩めたとき、がくんと全身が跳ね上がるような衝撃で尻の奥へ、また。震えというより痙攣に近い、ガチガチと歯が鳴る。ボロクソ泣いて、名前だって何度も呼んで、たすけてもうしんじゃうとかなんとか安いAVみたいな台詞をガチでほざいて鳴き喘ぎながら俺はそのうち、完全に意識を飛ばしていたのだった。


(140528 title by 亡霊)

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