下唇を噛みながら痛いぐらい目を瞑って腰を落とす。ぬめる先がぶれないように片手で支えながらそうしたから、それまで馴らされてすっかり蕩けていた俺のそこはあっさりと受け入れた。最初を受け入れたら後はもうあっと言う間で、自分でもいやになるぐらいスムーズに挿入されてしまう。いやだと首を振ってももう遅い。そんなことは自分がよくわかってる。
「ぁ、ひあ゛…ッい……」
全部銜え込む前に足が震えてしまった。これ以上入んないよぉなんてエロ本みたいな言葉が頭をよぎるぐらい、もういっぱいいっぱいで息をするのも苦しい。倒れそうになって手をついた先、めちゃくちゃ熱い体にぞくっとする。今吉さんは涼しい顔してるくせに、肌はうっすら汗を掻いていて呼吸が時々乱れるのが堪らない。俺なんかで感じてくれてんのかなとか、そう思うと疼いた。
「ん、んぅ…いま、よ…さ…」
「何」
「今吉さん、いまよ、しさ…ぁ、あっ…」
「せやから何やねん」
呼んでみただけ。とは言わなくてもこの人は既に気付いてそうな顔で、項垂れるようにして腰を動かしだした俺の髪を優しく触った。それがすげえ良くて、なんか髪の毛が気持ち良いってのも変だけど、でも言い表すならそんな感じで、俺は漏れ出す声をそのままに夢中で腰を動かし続ける。きもちいい。頭ン中どろっどろに溶かされちまいそうなぐらい。腰を上げるとガリガリとナカを引っ掻かれて、腰を落とすとぐぶぐぶと飲みこんで、ローションででろでろに解れた孔をエラが大きく拡げるたびに痙攣じみて腰がうねった。ああ、だめだ、髪に触られると頭を撫でて欲しくなる。はあ、はあ、と整わない息のまま俺は髪を弄る今吉さんの手に頭を摺り寄せる。
「あ、あっン…ッ」
「猫みたいやな」
「んン…!う、うっぁ!あ、」
呟いた今吉さんが頭を撫でた。気持ち良すぎて背中が反りかえると、体重を支えきれずに腰が落ちる。それ以上は入らないって奥まで行きそうになって慌てて腰を引いたら、それがちょっとした抽挿みたいでみっともない声が出た。大量に使った潤滑剤が生温く尻を零れるのがとてつもなく気持ち悪い。腰を落とす苦しさに身を引けば腹の奥がきゅっと鳴いて、欲しがるようにまた腰を落として、って、何度も繰り返して。
「自分で動くの、気持ちええ?」
「ひ、いあっアッ、きもちぃ、ぃ…です…っ」
舌を出してよだれをぼたぼた溢しながら男の身体に跨ってケツの穴にイチモツ受け入れて腰振って、こんなの想像するだけでもすげえみっともないのに、俺はぜんぶそれを今吉さん相手にやっている。引っ繰り返ったような声で喘いで、ぐちゅぐちゅ音立てて勃起したチンコを必死でハメて、もう俺のプライドとかなんかそういうのはどっかに行ったみたいだ。
「あ、あっ…ン、んっ」
「ワシも、気持ちええけど、なんか……。なあ、」
不意に名前を呼ばれて目を開く。溶けた視界で今吉さんと目が合って、ぞわっとした。
「自分でする方がええの?」
「へ…?」
その言葉の意図を理解できないほど呆けてたわけじゃないだけにすごい勢いで全身に鳥肌が立った。見上げられて竦む、蛇に睨まれたカエルみたいに。いつの間にか頭を撫でる手もどっかいった、俺は溜まった唾液を飲みこんで顔を歪める。どうしよう。さっきまでとはまったく別の意味で泣けてくる。
「ごめ、なさ…ちが…そ、じゃない……」
「じゃあ何や、言うてみぃ」
「今吉さんにシてほし、い…」
上出来。笑うような声が聞こえた。認識する前に入りっぱなしだったモノを抜かれて飛び上がる。体が反転して俯せに、そのまま髪の毛を少し乱暴に掴まれてシーツに押し付けられて、高く上げさせられた尻を掴まれて。それで。
「う、あ、ア゛ぁああッ―――!」
肌が密着すると弾くような音がした。怖がって入れられなかった奥の奥までみっしり埋め尽くされて足の震えが止まらない。断続的にビクッ、ビクッと震える背中を指がそろそろと伝っていく。「あ、おく、おく、きてる…あつ、い……」うわ言みたいな声音で呟いていた。何でそんな事言ったのか自分でもわかんねえけど、すげえ倒錯してて我ながらエロいなと思った。
「ひゃ、あッ!あン、あ、やっ!」
「…やらしい声。もっと聞かせろや」
「ッ、ああ、あっ、ぃまよ、しさ、っ!!」
つくりもんみてえな声。それが俺の口からひっきりなしに飛び出していく。両手で俺の腰を掴んだ今吉さんからはもう荒い息遣いしか聞こえない。バックで食い荒らすようなセックスは、なんかまるでレイプでもされてるみたいで、俺の中のどうしようもないところがめちゃくちゃに疼いてしょうがなかった。多幸感、とでもいうのか、頭の中がふわふわクラクラして最高に気持ち良い。狙ったように前立腺のとこを抉られて逃げ腰になるのを爪を立ててまで引き留められて、仕置きとばかりにまた抉られて、もう、限界。
「あっあ、やぁっ、も、らめ、イく…ッ」
「ええで、ほな一緒に、な…っ!」
覆い被さられて、奥まで突き上げられて背が撓る。うなじに噛み付かれた瞬間に頭の中が真っ白になった。汗だの何だのでぐちゃぐちゃなのも気にせず、二人でぐったりとシーツに埋もれて何度も深呼吸。
「いまよしさん、ほんとさいあくっす…」
「何でぇな」
「今日は俺がリードするつもりだったのに…」
ぼそっと呟くと分かって無さそうな顔するのがすげえムカついた。え、なに、それガチ?シーツに埋めていた顔をがばっと上げて寝そべったままの今吉さんの肩を押えて詰め寄って、呼吸整えて、
「アンタ誕生日だろ、おめでとうございました!」
時刻は0時を過ぎたところ。
誰かさんのせいでもう過ぎちゃったもんは仕方ねえけど、
「お、おおきに…」
顔真っ赤にして嬉しそうに笑う今吉さんが見れたから良いやって、俺も大概。
(6/3 Happy birthday!)